『身毒丸』復活公演レビュー

友人と観にいった『身毒丸』という、藤原竜也のデビュー作品の復活公演。
数年前、ファイナル公演という名で終わってしまい、ついぞ観ることができなかった…と思っていたら、今年のワシントン公演を期に日本でも再演するというので、あわててチケットを取った。

蜷川演出にしては短い、90分ほどの上演時間のなかに凝縮された、ある一家の歪んだ情念。
継母に対する愛と憎しみの間で身悶える主人公・しんとく丸に藤原竜也。
「家があって、お父さんがいて、お母さんがいて、子どもがいる」という家庭のスタイルに執拗にこだわる父親に品川徹。
そして、「買われてきた」継母役の白石加代子は、完全に撫子という鬼女が憑依していた。

3人とも、まるでそれぞれの一人舞台であるかのような、圧倒的な個性であるのに、家族合わせのシーンなど呼吸を合わせるシーンでは、みごとに「家族を演じて」いる。


役者のほかに、もうひとつの見どころとしてわたしが気になったのは、冒頭の異形のものたちの行進にもあるように、芝居全体を包み込む、なにか歪んだ時空間だ。

時代背景は、「かつて確かにあった『東京』という町」と設定されている。
かつて、というのが具体的にいつの時代を指すのか、あるいは本作はそもそも時代など超越した時空間と捉えるべきなのかもしれないが、少なくとも寺山修二が生きて描いた昭和という時代には、まだ、魔、とでもいうのだろうか、それとも魑魅魍魎とでもいうのだろうか、理屈では説明できないような異形のものが跋扈していたように思う。


いったいこの芝居はなんだったのか…テーマもストーリーも、まるでこの魍魎のように曖昧模糊としていて、セリフすら耳で聞いただけでは何を言っているのか理解できず、パンフレットの文字で読んではじめて、腑に落ちるというありさま。

ただ、3人の主役、とりわけ白石加代子のたましいの演技に眼を奪われて、撫子に引きずられるうちに、あっという間に時間がたってしまった、というのがほんとうだ。
さいたまの劇場は、久しぶりに見る満場のスタンディング・オベーションだった。
by chatelaine | 2008-03-09 23:58 | STAGE

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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