ノーベル賞作家は不健全がお好き

第138回の芥川賞・直木賞が発表された。芥川賞を受賞した川上未映子氏は、プロのミュージシャンでもあるらしい。才能豊かでうらやましいわ。

そんな中、わたしはといえば、ノーベル賞作家・川端康成の短編小説デビューを果たしたわけだが、予想以上のデカダンっぷりに、久しぶりに好みの文体を見つけたなあと興奮気味…。


◆川端康成『眠れる美女』新潮文庫

表題作『眠れる美女』をすっとばし、以前から読みたいと思っていた『片腕』という小話から着手。

数ページ読んだところで、これは文学という名の官能小説ではないかと疑問を抱く。
読み終えたところで確信に至った。「文学者」という婉曲の衣を身にはまとっているが、この川端先生、かなりのイロモノだ。


物語としては、主人公の男性が女性の片腕を一晩借り受け、その片腕から連想されるかつての女たちとの回想をはさみながら、片腕と会話し、眠る。
それだけのことを描いているのだが、とにかくまあその過程がいちいちエロティック。

読み進めるうちに、ふたりの、正確には一人と片腕の、醸し出す濃密な空気に息ができなくなる。かといって、時間をあけて読むと部屋の空気が入れ替わってしまって、この物語全体をおおっている淀んだ臭いが感じられなくなってしまう。
ここはやはり短編ということで、一気に読んで、潔く溺れた方がいい。


日本の頽廃文学の骨頂といえば、私的には三島を第一に挙げていたが、本作で三島の文体よりもさらに艶っぽさを感じたのは、三島よりも川端の方が、女というものをよくわかっている人だからなのだなと。

「失神する狂気に酔わされるよりも、そのひとのそばで安心して眠れるのが女はしあわせだと、女が言うのを私は聞いたことがあるけれども、この娘の片腕のように安らかに私に添い寝した女はいなかった」

…このあたりの表現、なんて女を知っている人の言葉なんだろうと。そして、それをなんて綺麗に書くのかしらと。ため息ものだわ。
by chatelaine | 2008-01-17 02:37 | BOOK

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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