華麗なる読書欲

今クールでこれだけは見たいと思っていたドラマ『華麗なる一族』なのだけど、結局いまだに一度も見れていない。

書店では原作の文庫が大量に平積みされていて、実家に戻ればそろっているのに、買って買ってと呼びかけてくる(気がする)ものだから、3冊をまとめ買い。
ついでに未読だった同じく山崎女史の『女の勲章』上下も購入。ついでのついでに、なぜか隣にコーナーができていた安部公房の『箱男』も購入。(安部公房をついでと言っていいのか?)

うーん、文庫ばかりだと思ってタカをくくっていたら、けっこうなお値段に…。


山崎豊子『華麗なる一族 上・中・下』新潮文庫 読了

通勤時はもちろん、お昼のあいまにも読み(おかげで最近のランチはおひとりさま)、寝る前にも欠かさず読んだせいか、仕事中に「どうぞおよろしく」「どういうことですの?」などなど、あやうく万俵家の言葉使いが乗りうつりかけるったら。

『大地の子』『沈まぬ太陽』の筆力には劣るものの、その緻密な取材力は本作でも相変わらず。
就職活動時でも銀行だけはどうしても興味が持てずパスした私だが、山崎女史の手にかかれば、企業という生きものの貪婪な姿勢、政治も絡んだ陰謀姦計や奸智に長けた人物たちが登場し、なんだか塩野七生や藤本ひとみの書くヨーロッパの政治史に通じるものを感じた。

洋の東西を問わず、野心家というものはどこにでも存在し、ようやく野望を達成したと思いきや、次の瞬間にはもっと大きな社会の歯車に飲み込まれている、という無常観が根底にはあるのかもしれない。


さらに本作では、企業のありように加えて、家族というテーマも大きい。
冒頭がまさに「華麗なる一族」万俵家の晩餐でもってスタートし、ラストもまた万俵家の晩餐で締めくくられる流れは象徴的。

が、ラストの晩餐では、すでに鉄平は死に、大介をとりまく状況も「華麗」とは決して言えず、一族離散あるいは凋落の陰が見える。大介自身は合併が成功したものと思い込み、意気揚々としているのが、逆に皮肉で。
というか、ラストまで読むと、この「華麗なる一族」というタイトルは、かなりアイロニカルではないか。

原作では大介の事業的野心と血脈の葛藤・苦悩がメインとなっているが、ドラマでは鉄平が主役だと聞いた。
ということは、もはや悲劇でしかありえないよね…。

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山崎作品には、名文で沸かせるという向きはないが、ストーリーの中でどきりとする箇所がいくつかある。いわゆるナレーション的部分。

「五億円の預金獲得と引換えに、一人の支店長の命が失われたのであった」
このあたりなんか、ドラマにするとすごく涙を誘いそう。

「第三銀行と平和銀行との合併は、事実上、潰えたのであった」
この、ぴしりとした書き方で章が締まる。

番外編
「公家の女の肌はましゅまろのようだな」
ましゅまろって、なんかひらがなで書くと、いやらしさ倍増…。
by chatelaine | 2007-01-19 23:24 | BOOK

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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