『そして、ひと粒のひかり』レビュー/麻薬と赤ちゃん

スペイン映画に詳しく、私と映画の嗜好が似ている友人から、「アカデミー主演女優賞に無名ながらノミネートされた、コロンビアの女優の映画が公開されたよ」と、本作『そして、ひと粒のひかり』のことを聞いて、渋谷の劇場に行ってみた。
(これ、スペイン映画ではないけど、コロンビアが舞台なので、スペイン語映画)

コロンビアの女性による麻薬密輸の話、という大体のストーリーはチェックしてから観にいったのだけど、予想以上にリアルな出来だった。まるでドキュメンタリーのような。

さて、どうやって密輸をするのかといえば、麻薬を詰めたカプセルを胃の中に入れるのである。それも、1個や2個じゃない。60~100個、巨峰大の大きさのカプセルを、文字通り詰め込んで、のちに排泄し、取り出すのだ。
もしも、胃の中でカプセルが溶けてしまったら…!


いままで南米の実情に対して何の興味もなく、興味ないから、という理由で見向きもしなかったテーマを、本作で図らずも直視することになって、衝撃をうけた私は涙さえ出なかった。

私がロンドンで知り合ったコロンビアの女の子たちは、流行の服に身を包んで、アクセサリーをきらめかせ、キレイにお化粧をして、いかにも都会の女の子という感じだったから、失礼ながらコロンビアって、私が思っていたほども貧しくないのかもしれない…と思ったのだけれど。
彼女たちは、一部の恵まれた人たちだったのだろうか。


映画に登場する密輸者たちは、誰かに強制されているわけでもないし、自分の判断でこの仕事をしている。だから責任は彼女たちにある…と言ってしまえばそれまでなんだけど、でもそんな仕事を選ばざるをえない環境にいるのは、やっぱりどこか社会が歪んでいるからだと思う。

…なんて、自分で書いていながら、自分のわかったふり・偽善っぷりに吐き気がするけど。でも、本作を観て、話題となった主演のカタリーナ・サンディ・モレロの演技よりもなによりも、その題材に強いショックを受けて、普段は考えないようなことまで考えてしまった。

いままで後回しにしていた、南米の現実を扱った作品…『シティ・オブ・ゴッド』『アモーレス・ペロス』を観てみようと思った。


【以下、ネタバレあり】






ひと粒のひかり。
主人公マリアの宿した赤ちゃんの存在が、後半でかなりキーとなっている。同じ体内に、麻薬と隣りあって生きている赤ちゃん。このきわどいコントラストがなんとなく詩的で、たまらなく危ういバランスなんだけど、この対比があるからこそ、生と死の重みが出ているのだと感じた。

産婦人科での検診のときのマリアの表情といったら!

「マリア」という名の少女が宿した赤ちゃんとなると、どうしてもイエスを連想してしまうよね。教会のシーンもあったし。
その意味は、「救い」それとも「赦し」?
少なくとも、本作のマリアにとって、この赤ちゃんの存在は、希望、そしてひと粒のひかりなのだろう。
by chatelaine | 2005-10-22 23:23 | CINEMA

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


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