『藁の楯(わらのたて)』レビュー/大掛かりな不条理劇

「ウォーキング・デッド」もシーズン4に追いついたことだしと、次はDVD『藁の楯(わらのたて)』を観た。カンヌ映画祭に出品されたらしいけど、不条理な部分はともかく、現実離れした設定と派手なアクションは、あんまりカンヌには好まれなさそうだよね…。(三池崇監督はそれも織り込み済みだそうですが)

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最愛の孫娘を殺された富豪・蜷川が、容疑者の清丸(藤原竜也)を私的制裁するためにとった「清丸を殺せば10億円」という宣伝行為によって、日本中が清丸に注目する。

警察官、看護士、機動隊…。本来なら清丸の身柄を守るべき立場の人間まで、巨額の懸賞金に目がくらみ、次々に襲いかかってくる中、清丸を無事に送検するために護送するSP・銘苅(大沢たかお)と白岩(松嶋菜々子)の奮闘と葛藤を描いている。


【以下、ネタばれあり】








蜷川の目的は「清丸の死」だと思うが、懸賞金のせいで、皮肉なことに、それまで普通に生活していた一般市民の欲望をあぶり出す構図になっている。
目的を速やかに実行するだけならば、腕の立つ殺し屋でも雇って、清丸を確実に殺す方法もあったはず。それをせずに、世間を巻き込む形にしたのはなぜなのか。

①清丸に、国中が敵であり、どこから命を狙われているかわからない恐怖を味わわせたかった
②世間を巻き込むことで事件を風化させず、犯罪者の再犯のリスクを知らしめたかった
③一度目の殺人で清丸を死刑判決としなかった、法治国家に対する復讐
④金でなんでも買える、という思想の実現
⑤死期が近づいているのでやぶれかぶれ

といったところだろうか。

そんなにお金持ちなら、最初から孫娘にSPをつけておけばよかったのにね…というそもそも論もありつつ、銘苅と白岩がSPに選ばれているのも、護送チームに内通者がいるのも、裏で糸を引いているのは蜷川で、物語全体が蜷川のゲーム盤という感は否めない。
そのゲームに、自分の正義と良心はどこまで抗えるか…というのが本作のテーマか。

松嶋菜々子があっさりとやられてしまったのには驚いた。さすが三池監督、ヒロイン(?)にも容赦なし。あと、新幹線の車掌はいろんな意味でかわいそうだった。こんな護送に乗り合わせるとは、運が悪かったね…。

劇中、「清丸には命を懸けて守る価値はあるのか?」という再三の問いかけに、不適に笑う藤原竜也の抑え目な演技がよかった。藤原竜也のことだから、もっといっちゃってる演技を予想していたけれど、おとなしいわりに端々でカチンとくる言動も、少女の昼寝姿に我を忘れるシーンも、清丸は病気なんだなと自然に思えるぐらいリアルだった。

ラスト、清丸が裁判で全く反省していないセリフなどは、法の限界というか、良心の敗北というか、むなしさを感じるものだった。
by chatelaine | 2013-11-17 23:10 | CINEMA

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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