舞台『クリプトグラム』レビュー/暗号の集積

シアタートラムで上演中の舞台『クリプトグラム』のプレビュー公演を観に行ってきた。

クリプトグラムとは「暗号」「(神聖なものの)シンボル」という意味らしいが、本作はタイトルどおり、なかなかに解読するのが難しい作品だった。ここまで「?」が続く舞台も珍しいと思うぐらいに。


登場人物は3人。そのうち2人は母親と息子という関係で、残る1人の男は父親ではなく、関係性は明かされないまま。最初、男は子どもの内面を擬人化した役で、実態がないのかと疑ったけど、話が進むにつれて、どうやらそうでもなさそうだなと。

ひたすら密室での会話劇でありながら、その会話もいまいち要領がつかめず、ひと言ひと言セリフをかみしめるように、「なぜそうしたの」「なぜそうしなかったの」と理由を確認しながら会話が深まっていく。言葉ひとつにこだわるあまり、話がなかなか先へ進まないのがじれったくて、よけいに話の先が気になるというパターン。

そしてなにより、やや癖のある息子に対して、自分の感情をコントロールしきれない母親役の安田成美のいらだちが、まるで自分を見ているようだった。耐え切れずに息子に暴言を吐いてしまうところなど、これ、わたしだ!と思ってしまった。そして、2人を取り成すような役割の谷原章介がまた、意味深に見えてくるわけで…。

初日のプレビュー公演ということもあって、3人のやりとりがギクシャクした感は否めなかったけれど、 子ども役の坂口湧久がセリフの多い役をかなり頑張っていたように思う。というか、子役とはいえ脇役ではなく、むしろキーとなる人物を自然に演じていた。


結局、作中のメインの出来事はといえば、森の小屋への旅行計画。眠れない子ども。父親の不在。ナイフと毛布への執着。本に書かれた3つの恐ろしいできごと。そして、男たちの裏切りが露見したこと。

これらの断片の事象が、暗号のかけらのように最後にはつながって、最後に全体像が見えるのかと思ったが、最後まで明確なメッセージはつかめなかった。
ただ、ゆがんで壊れてゆく家庭の一端を見たような、空恐ろしさを感じる作品だった。
by chatelaine | 2013-11-07 23:56 | STAGE

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko