舞台『秋のソナタ』レビュー/血を吐くような母娘の対決

東京芸術劇場シアターイーストで上演された舞台、『秋のソナタ』を観に行ってきた。かつてイングリット・バーグマンが主演した映画の舞台化である。
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登場人物は映画よりも簡略化され、母と娘の積年の確執を描いた2人芝居となっている。佐藤オリエが母、満島ひかりが娘。いわゆる毒母と、抑圧された娘の対決のストーリーなので、どちら側に感情移入するかで、かなり感想が変わってくるだろうなと感じた。

冒頭より、娘側の視点で物語がはじまっていくため、一見すると、娘の主張に正当性があるように思え、感情移入してしまうけれども、あえて母親側の視点で見ると、母親だからといって、そんなに完璧じゃないし、強くもない。決していい母親ではないけれど、これでも精一杯やってきた!という佐藤オリエの心の叫びが感じられた。

この母親の気持ちにピンとくるかどうか…。わたしも、昔はファム・ファタル系のフランス映画を観ては、「こういう自由奔放な女性は子ども作っちゃだめだよ」なんて思っていたけれど、子育ては想像以上に孤独で、責任重大で、正解のない悩ましいもので、そういう苦悩を知った今では、安易に親だけを責められなくなってしまった。


とはいえ、長年のあいだ抑圧された娘の感情が爆発するシーンはすごい。
ママに愛されたかった。愛していないならそう言ってくれればよかったのに、愛してると嘘ばかりついた。ママに本音は絶対に吐けなかった。ママをがっかりさせたくなかった。ママは、ママに、ママが。

満島ひかりが「ママ」と責めるように呼びかけるたびに、なんだか自分が子どもに責められている気がして、わたしの身もすくんだ。それほどに哀しみと憎しみと憐れみを込めた、すごい声音だった。
満島ひかりは、直近のドラマで母親役を演っていたようだけど、やはり母親のなんたるかを(演技とはいえ)知っているからこそ、演じられる役だったのではないかと思う。


それでも、いくら母親を憎んで断罪しても、もしかしたら…と、母親からの愛をどこかで期待してしまう。それが子ども。子どもはどんな親でも愛さずにはいられない、そういう母と子の宿命がよく描かれていた。

しかしこの場合、娘の感情はどうすれば満たされるのだろうか。母親が非を認めたとしても、愛してほしかった子ども時代は返ってこない。もしかすると、断罪する当人にも、どうしたらいいのかわからないのではないか。


また、劇中のセリフの硬質さも際立っていた。単なる罵倒ではなく、「ママは私を冷え切った子宮に宿して、嫌悪と共に吐き出しただけ」というセリフなど、文学的な責め言葉っぷりに震えた。このあたりの言葉の感覚はすごくわたし好み。原作となったベルイマンの映画の方も観たいと思った。
by chatelaine | 2013-10-26 23:33 | STAGE

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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