『北のカナリアたち』レビュー/歌を忘れた子どもたち

湊かなえの原作「二十年後の宿題」を映画化した、『北のカナリアたち』をDVDで観た。

北のカナリアたち [Blu-ray]

TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

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北海道の、それも利尻島や礼文島といった北の最果ての地を舞台に、元小学校教師のはる(吉永小百合)が、かつて分校で起こったある事故を回顧する形で描いている。

はるが受け持った6人の生徒たちは、事故についてそれぞれに罪の意識をもったまま暮らしており、はるとの再会で、懺悔したり告白したり真実が暴かれたりという流れは、ああ、湊かなえらしいプロットだなあとひしひし感じた。


6人の中でもキーとなる、吃音でまわりとうまくコミュニケーションを取れない「のぶちゃん」役を、森山未來がおどおどした目でうまく演じている。
彼の人生を見るにつけ、本当に気の毒で、大好きだった先生も島を去ってしまうわ、苦労してせっかく掴みかけた幸せを奪われるわで、それでも生きなければならないというのが本作のメッセージだと思うのだけど、それは冬の海のように、厳しくて孤独だ。

そして、そのテーマを表すように、木村大作のカメラは、暗くて寒い北国の冬の自然の厳しさをありのままに映し出し、それが人間の持つ孤独と合わせ鏡のようになっている。

そんな島の暮らしの中で、はるは、閉塞感ある小学校に訪れた春の光のように、歌によって子どもたちに自信と活気をもたらす。子どもたちのコーラスは美しく、観終えた後もまだ「カリンカ」が耳に残る。
しかし、一度、はるによって歌の才能を見出されたカナリアたちは、事故後、歌うことを忘れたままそれぞれの道を歩み、二十年経って再びはるのもと、再会を果たす。

ラスト、まさか教室に6人全員がいるとは思わなかった。
のぶちゃんの驚きと涙に崩れる顔。
はるの仕掛けた最後の授業は、厳しい人生に春の訪れを暗示する、「歌を忘れたカナリア」たちへの、救いのように思えた。
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歌を忘れたカナリアは後ろの山に棄てましょか
いえいえ それはかわいそう
歌を忘れたカナリアは背戸の小薮に埋けましょか
いえいえ それはなりませぬ
歌を忘れたカナリアは柳の鞭でぶちましょか
いえいえ それはかわいそう
歌を忘れたカナリアは象牙の舟に銀のかい
月夜の海に浮かべれば 忘れた歌を思い出す
(詩・西条八十)
by chatelaine | 2013-08-06 23:33 | CINEMA

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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