『アンドレアス・グルスキー展』 レビュー/絵画のように計算された写真たち

国立新美術館で開催中の、『アンドレアス・グルスキー展』に行ってきた。
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不勉強ながら、ドイツの現代写真家ということ以外、まったく知らないということもあり、今回は音声ガイドを借りたのだが、大正解だった。
というのも、グルスキーは実在する場所を撮っていながら、作品によっては、これはなに!?と疑問を感じさせる、抽象化された作品もあるので、音声ガイドで随分理解が深まる。(というか、解説がないと被写体が何なのかよくわからない作品も)

これまでわたしがよく観てきた、好きな写真家というと、パリの街を撮り続けたロベール・ドアノーやウジェーヌ・アジェで、恋人たちのキスや、街の人々のふとした表情など、「決定的瞬間」を切り取ったものがほとんどだった。これらの作品は状況を物語っており、説明はほとんどいらない。

一方、このグルスキーは、決定的瞬間を切り取るという手法ではなく、緻密に作品構成を計算して、デジタル処理をかけ、納得いくまで作品に手を加えるという手順を踏む。
こうしてできあがった写真、とりわけ最近の「バンコク」シリーズなどは、写真というよりも、まるで絵画作品のようだった。「南極」という作品なども、写真表面の凹凸加工がすばらしく、いったいどうやって制作しているのかまるでわからない。


ただ、いくら写真に手を加えるといっても、目の付け所がちがうというか、やはり被写体そのものへの視点がユニーク。
グローバリゼーションがテーマのひとつというだけあって、世界各国の題材がモティーフになっており、そのなかで、日本もいくつか題材になっていて、「東京証券取引所」という作品は、海外の証券取引所シリーズと比べると違いがあって面白い。東京はみんな黒いスーツなのに対し、シカゴはカラフルな服。お国柄が出ているなあと苦笑い。

今回、わたしが気に入ったのは、「パリ、モンパルナス」や「ハム、東鉱山」や「フランクフルト」など、人間のいとなみが垣間見える作品。
どうやら代表作の「カミオカンデ」や「カタール」などの無機質な作品はあまり好みではない、ということがわかった。


また、この個展のキュレーションもグルスキー自身が行っており、時代順でもテーマ別でもなく、アーティストの思うままに作品が並んでいる。鑑賞者は、初期の作品や、最新作をいったりきたりするわけだが、それもまたありきたりな展示方法でなく、面白い。

今回はひとりで鑑賞したけれど、意外と子ども連れでも大丈夫かもしれないと思った。作品のサイズが大きくてインパクトがあるし、対象が均一に並ぶ様子は子どもの目を引く。
「この美術展が(いろんな意味で)4歳児の鑑賞に堪えうるか」という点は、毎回悩むところなのだけど、今になって、子どもの反応が見たい気持ちが増してきた。会期内にもう一度行けるかなあ…。
by chatelaine | 2013-07-21 23:08 | ART

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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