『桐島、部活やめるってよ』レビュー/わたしにとっての「桐島」

つい先日、米国アカデミー賞作品の『アルゴ』を観たばかりで、今度は日本アカデミー賞作品賞・監督賞を受賞した、『桐島、部活やめるってよ』をDVDで観た。
原作は読んでいないけれど、「ゴドーを待ちながら」へのオマージュ作品で、「桐島」は登場しない、ということだけは聞いていたのだが、映画はすこぶる評判がいいようで。

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本作は、桐島が部活を辞めたあとの、クラスメートを中心とするまわりの人々の反応を描いているのだけど、言葉による状況の説明はあまりなく、その代わりに、登場人物の描写がとてもリアルだと感じた。とりわけ、表情やしぐさに、桐島不在に対するとまどいや怒り、絶望を感じるシーンがたくさんあった。
もちろん、桐島がなぜ部活をやめたのかの説明もない。それゆえ、観る人によっていろんな解釈ができて面白いなあと。

また、高校生活をとてもリアルに映し出していることも特徴的。
教室の中央で華やかにおしゃべりするグループと、クラスの隅でひっそりと、しかし独自の世界を展開しているグループ。体育会系部活と文科系部活、そして帰宅部の、暗黙知としてのヒエラルキー。オープンな恋人たちと、クローズな恋人たち。淡い恋心。友人間の軽いいさかい。
…などなど、まるで自分が高校時代に戻ったかのような、そんな錯覚を受けた。


「桐島」については、友人たちからの評価でしかうかがえないが、桐島の不在によって、自分のアイデンティティが失われた子の多いこと。バレー部のメンバー、「桐島の」彼女、「桐島の」親友…。

桐島の不在に動じないのは、神木隆之介演じる、映画部の前田ぐらいだ。彼は、誰にも影響されることなく、自分のやりたい映画制作に夢中で、なにげによき理解者もいる。クラスでは存在感がなくても、実は、これはとても恵まれているのではないか。
一方で、桐島の親友・宏樹は、格好もよくてスポーツもでき、もてるし彼女はいるけれど、部活に入れ込めず、彼女にも淡白で、夢中になれるものがなにもないという感じ。

好きなことにのめり込んでいる前田と、一見充実しているようで、実は空虚な宏樹。
ラストの、屋上での前田からのインタビューは、宏樹の劣等感を刺激したのだろう、それが彼の流した涙の意味だと思う。


ところで、「桐島の彼女・親友」というステイタスは、「○○くんのママ」「○○さんの奥さん」という立場に似ている気がする。他者に自己の存在を依存している点、「桐島」の立場が強ければ強いほど、自分も強いような錯覚をする、という点で。

自分にとって「桐島」に匹敵するものはなんだろうか。夫?子ども?仕事?
また、「○○くん」がいなくなると自分はどうなるのだろう。
わが身に置き換えて考えさせられる作品だった。
by chatelaine | 2013-05-24 23:38 | CINEMA

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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