『アルゴ』レビュー/国家規模のハッタリ作戦

今年、アカデミー作品賞を受賞した『アルゴ』をDVDで観た。

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1979年のイラン革命時に起きた、実話をもとにしたアメリカ大使館立てこもり事件。ごく最近までCIAの機密事項だったのが、機密解除され、ベン・アフレック監督によって映画化に至ったという。同年にはソ連のアフガン侵攻もあり、アメリカにとっては、国際政治の舵取りが困難を極めた時期と言っていいだろう。

一緒にDVDを観た夫は、イラン革命のことをリアルタイムでTVで見ていて、衝撃的だったことを覚えていると言う。一方、わたしは当時はまだ生まれてなかったけれど、同じような体験といえば、ベルリンの壁が崩壊するシーンを鮮明に覚えていて、なにかずっと、ドイツに対して特別な感情をいだいている。たぶん、6~7歳のころだったと思うが、TVの影響は、映像が繰り返し流されることからも、なかなかに恐ろしい。

東日本大震災の映像は、当時まだ2歳だった息子には、極力見せないようにしてきた。息子にもこのあたりの衝撃的な映像の類は、(しかしそれが世界で起きている現実なのだが、)いつ解禁するか、状況に応じて判断をしなければと思う。


本作は実話ベースといえども、航空券の予約が取り消されてしまったり、映画制作オフィスの電話に誰も出なかったり、滑走路まで民兵が追ってきたりと、脱出劇の佳境では、いちいちハラハラさせるように脚色されている。(このあたりはさずがに脚色よね?)

けれども、思惑通り、久しぶりに映画で手に汗を握るほど興奮してしまった。そして、これから海外への飛行機に乗る際は、領空というものを意識しそう。

米国政府はなかなか一枚岩とはいかず、脱出計画が二転三転してしまうのにはやきもきしたが、カナダ大使夫妻とその家政婦の勇気にはほれぼれした。この映画で、CIAとカナダは株を上げたと思うけど、イラン政府的にはどうなんだろう。私的には、アメリカがイラン前政権(の圧政)を後援していたことなど、わりと中立に描いているかなと感じたけれども。

あと、脱出計画の実行者、トニー・メンデス(ベン・アフレック)も、家族とうまくいかず、孤独な人物のように描かれていたが、存命中に功績が正当に評価されてよかったね。一方で、いろいろな政治的理由で、CIAにはまだまだ隠れた立役者がいるんだろうなと推測したり。

最後に、ハリウッドでつまらないと捨て置かれていた「アルゴ」という脚本が、こんなところで別の意味で有名になるなんて皮肉であり、また、なんでもありなハリウッドらしくて面白いとも思った。
映画製作というニセの手段で解決した史実を映画化するという、なんとも上手くひねった作品かな。
by chatelaine | 2013-05-12 23:50 | CINEMA

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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