『ミュシャ展 パリの夢 モラヴィアの祈り』レビュー/ミュシャの深淵

森アーツセンターギャラリーで開催中の『ミュシャ展 パリの夢 モラヴィアの祈り』に行ってきた。
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休日の17時ごろに行ったのだけど、入場規制がかかっており、20分ほど待機。ようやく入場してからも、入口付近はとても混んでいて、ほぼ流れ作業で鑑賞するはめに。うーん、ここまで混んでいるとは、ミュシャを完全に甘く見ていた。
というか、ミュシャが日本で人気なのは知っていたけれど、自分の中ではすでに「観尽くした」と思っていたので、勝手にまわりもそうだと思っていたのだった。

ミュシャは学生の頃に入れ込んだ時期があって、アール・ヌーヴォー関連の美術展に足しげく通ったり、出身国のチェコにも行ったりと、大方の作品は観尽くしたような気になっていたのだけれど、実は「スラヴ叙事詩」のあたりは全く知らなかった。無知であった自分が恥ずかしい。

今回「あなたが知らない本当のミュシャ」というテーマで、晩年期の祖国愛のミュシャにスポットを当てる意図があるのだと思うが、それがとても興味深かった。少なくとも、「アール・ヌーヴォー」という切り口では見ることのできないミュシャの作品がそこにあった。


まず前半は、サラ・ベルナールを描いた演劇ポスターや、ビスケットなどの商品パッケージなど、商業主義的な部分も強かったりするのだけど、ここまで芸術的だとビスケット買いたくなるねえ。タバコやミルクや自転車や香水など、たくさんある中で、わたしはモエ・エ・シャンドンの宣伝ポスターが一番好き。たぶんこれは学生の頃からずっと変わらない。この絵のラベルを使ったボトルなど、復刻してくれないかしら。

しかし、改めてミュシャのポスターをじっくり観てみると、装飾過多なのに、なぜこんなに一体感があるのだろうと、その精巧さにため息をついた。装飾の細かさ、モティーフごとに少しずつ異なる色彩と表情、どれも美しく、ほんとうに魅せられる。
なかでも、「四季」「四芸術」「宝石」「月と星」などの4枚連作のシリーズは壮観だった。

箸休め的に、「装飾資料集」の展示も興味深かった。アール・ヌーヴォー調の細かい装飾やレタリングは、ずっと観ていて飽きないのだけど、いかんせん人が多すぎて疲れてしまい、じっくり観ることができず。そもそもこのギャラリーは狭いので、これだけの点数を展示するとなると作品の間隔も狭まってとても混雑してしまう。残念なことだ。


中盤の「パリ万博」の内容を経て、後半からは、暗い色調の大作「スラヴ叙事詩」関連の展示が始まる。チェコは大国のはざまで歴史的に苦労した国であり、ミュシャは余生を祖国愛にささげたそうな。ミュシャ本人的には、美しい女性のポスターより、こちらに注目してほしいのかもしれないな。

ただし、残念なことに、わたしはそこまでスラヴ民族の歴史を知らないわけで…。やはりケチらずに解説を借りればよかったか。
戦争や独立や復興をテーマにした作品には、変わらず女性が登場するのだけど、その瞳は厳しくも哀しげで、アール・ヌーヴォーのミューズたちとは一線を画している。とりわけ、わたしの気に入った、「スラヴィア」と「宿命」という、よく似た構図の作品は、生へのたくましさと力強さを感じる、これまでにないミュシャの深淵を見た気がした。
by chatelaine | 2013-04-14 23:32 | ART

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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