歪んだ親子のかたち

久しぶりに小説を読んだ。
扱っているテーマが歪んだ親子関係ということもあり、どちらも読後感が悪い小説なのだけど、親の立場で読むと、共感するシーンも多々。

中脇初枝『きみはいい子』ポプラ社 読了

きみはいい子 (一般書)

中脇 初枝 / ポプラ社


郊外の町を舞台に、登場人物が少しずつリンクする、5話の短編からなるオムニバス形式の小説。

平易な文体でかなり読みやすいのだが、虐待する側・される側、ネグレクト、シングル家庭、障害をもつ子どもなど、問題をもった親子関係にフォーカスした短編ばかりで、それがまた妙にリアリティがあり、読者を泣かせるツボを心得ているなという印象。
これは電車やカフェでは読めないね、泣きすぎて。

「きみは何も悪くない。いい子だよ。」
第三者がそう言ってやることで、虐待を受けている子どもたちがどれほど救われるか。逃げ場がある、ただそれだけで、次世代への負の連鎖を止める楔となる。

一話目で「ハグをすること」についての効用が書かれていたけれど、登場する人物みんなをぎゅっと抱きしめたくなる作品だった。


湊かなえ『母性』新潮社 読了

母性

湊 かなえ / 新潮社


金原ひとみの『マザーズ』に匹敵する直球タイトルで、前々から気になっていた作品。

『告白』の作者ということもあり、どんなサスペンスフルな親子関係を描くのか?と思っていたら、母娘の共依存のお話で、どちらかというとホラーだった。

一人称による独白で進む構成、対象人物をミスリードさせる方法や、最後まで固有名詞を出さない設定は、つくづく湊かなえっぽいなと。


自身が「母親」になるよりも、ずっと「子ども」でいたかった女性(主人公)と、そんな母をもった娘の悲劇。

人の親でありながら、病的なまでに母親の愛を求め、母親と同化することに意義を見出している主人公には嫌悪感を抱くほどだ。
けれども一方で、家庭崩壊するきっかけとなった事件において、「子どもはまたつくれるわ」という、極限状態の主人公の思考を一概に否定はできまい。


母性とは、女性ならば本来持っていて当然の美徳。というのが今だ通説なのだろうか?
そうではない、皆がみんな、当たり前のように母性がはじめから備わっているものではない、あるいは濃縮された母性は時として毒にもなる…
と、通説に挑みかかるような作品であった。


作中で象徴的に配されているリルケの美しい詩が、母娘の愛と悲しみをひきたてている。
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ああ 苦しみの風景のうえに重たく垂れさがっている
涙でいっぱいのひとよ じっと怺(こら)えている空よ
彼女が泣くとき おだやかな夕立が
斜めに走ってゆくのだ 心の砂層をかすめて

ああ 涙で重たいひとよ あらゆる涙をのせた秤よ
晴れ渡っていたために 自分を空と感じはしなかったのに
いまは宿している雲のために 空であらねばならぬひとよ

単一な 厳しい空のもとで お前の苦しみの風土が
なんとはっきり なんと近く見えて来ることだろう まるで
垂直な世界と向いあって水平にものを考える
横たわっていながら おもむろに目覚めた顔のように
(「リルケ詩集」より抜粋)
by chatelaine | 2013-02-22 23:57 | BOOK

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


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