『会田誠展 天才でごめんなさい』レビュー/辛辣な悪趣味

森美術館で開催中の『会田誠展 天才でごめんなさい』を観に行ってきた。刺激の強い性表現で市民団体から抗議を受けるなど、物議をかもしている作家の大規模な回顧展だけに、怖いもの見たさもあいまって期待が高まる。
会田本人の解説が入ったオーディオガイドが無料なので、これは必携。
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最初の展示室は、会田本人が「軽いジャブ」と言う部屋で、会田誠の作品がどんな傾向のものであるかがプロローグ的に展示されており、作風の幅の広さをうかがわせる。ここでは、「鶯谷図」という作品の、ピンクチラシのコラージュという手法が面白いと思ったのだけど、どうやらこのパターンは会田の得意技のよう。
次の部屋の「戦争画 RETURNS」シリーズでも、テーマは違えど同様の手法である「大皇乃敝尓許曾死米(おおきみのへにこそしなめ)」という作品が刺さった。旅行会社のアジアンリゾートのパンフレットをコラージュし、その上に軍歌を描いたもの。いまや人気リゾート地の沖縄もサイパンもフィリピンも、すべて太平洋戦争の犠牲となった地だ、ということを風刺している。


ここまできて、会田誠氏が、現代日本の一部を切り取り、辛辣さをもって表現する、しごくまっとうな現代美術家だということに少なからず驚いた。「美少女画」という一部のイメージが肥大しすぎていたことを反省…。
現代アートというと、抽象的で不可解なもの、という印象があったけれど、会田の作品は確かに過激ではあるが、「?」となることが少ない。現代日本、とりわけ都市部に住んでいれば、「なるほど」「あるある」と腑に落ちる内容なのだ。世の中を皮肉交じりに表現するのがとてもうまい作家だなあと。


次の部屋の18枚のポスターの連作は、子どものころに、学校の美術の時間に書かされるような「道徳的な絵」に違和感を感じていた会田が、28歳のときに描きなおしたシリーズ。小学1年生から中学3年生までになりきって描かれており、男子学生「らしさ」が感じられて愉快。

大作「モニュメント・フォー・ナッシング」シリーズも興味深い。震災時の原発問題に関するツイートを集めた作品や、商売繁盛の熊手の型に秋葉原文化を再現した作品など、なじみのあるものがアートとなっている。同じ部屋にある「一人デモマシーン」という作品も、2002年制作もので、震災以前のアイディアとは思えない。

次に、ピンク色の小腸のモチーフで埋め尽くされた、どぎつい「ピンクの部屋」を抜けると、大型の絵画のコーナーである。広いスペースを贅沢に使って展示されており、大量のサラリーマンが折り重なって倒れている「灰色の山」、大量の裸体少女が入れられた「ジューサーミキサー」といったショッキングな作品が続く。ここで軽く頭を麻痺させるのは、次のR18指定の部屋への布石だろうか。

さて、問題となっている小部屋は、確かに悪趣味である。特に「犬」シリーズは、こういうアートにわりと耐性のあるわたしでも及び腰になるというか、これを描くことで何を訴えたいの?という気持ちになる。まさに賛否両論だけど、いずれにしても、観ないことには、批判もできまい。


日本の伝統的な美術様式(屏風絵、曼荼羅、阿弥陀仏、熊手など)を枠組みとしてたくみに使いながら、中身は現代社会に対する強烈な問題提起がなされている。かつて、やまと絵に金箔が貼られていた部分に代わって一万円札をコラージュし、花鳥風月の代わりにゴキブリやカラスを描く。そのギャップが面白く、「芸術かワイセツか?アートとはなにか?」を再考するきっかけとなる美術展であった。
by chatelaine | 2013-02-06 23:38 | ART

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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