映画版『レ・ミゼラブル』レビュー/新楽曲も加わって

まわりでも観に行っている人が多く、ネットでもその評判を聞くにつけ、早く早くと気が急いていたけれど、ようやく念願の映画『レ・ミゼラブル』を観に行くことができた。
ミュージカルの中では、「オペラ座の怪人」と並ぶ、わたしの最愛の作品。まるでパブロフの犬のように、楽曲を聴いただけで条件反射的に涙がでてきてしまい、化粧が落ちるどころか目が腫れて開かない事態に…。
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小さいときに手に取った「ああ無情」という目を引くタイトルの本。
バリケード、という言葉をはじめて知ったのも、フランスという国のことを強く認識したきっかけも、この本だった。
原題の「レ・ミゼラブル」を「ああ無情」と翻訳した黒岩涙香のセンスが秀逸。(デュマの「モンテ・クリスト伯」を「巌窟王」と訳したのも同じく黒岩。)

レ・ミゼラブル (1) (新潮文庫)

ユゴー / 新潮社


映画版は、新演出の舞台版と同じ構成なのだろうか?という基本的な疑問をもちながら鑑賞。
冒頭の船のシーンは新演出らしく、映像的にもインパクトがあり、後の伏線となるバルジャンの馬鹿力が描かれていて、なるほどここを繋げてきたかと。他にも、旧演出にはない、バルジャンとリトル・コゼットの手に汗握る逃避行など、新しいシーンと楽曲も追加されていて驚いた。

が、旧演出でわたしのお気に入りシーンだった、ガブローシュ(バリケードの少年)が弾薬を拾って死ぬ際の、「一発目は王様に~、二発目は貴族に~」というくだりがなくなっていてショック。代わりに、ジャベールがガブローシュの遺体に勲章をつけ敬意を表すという、新たな泣かせどころが。
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歌はやっぱりミュージカル俳優の生歌には及ばないけれど、映画のいいところは、俳優たちの生き生きとした表情のアップが見られることと、風景などのパノラマ映像美。バルジャンの山越えや、パリの街並みとバリケードの空撮も、映画ならではの迫力で、これはなかなか舞台では表現できない部分かと。

アン・ハサウェイは、聖母と娼婦、2つの表情をうまく演じ分けていたし、下水道から出てきたヒュー・ジャックマンと、待ち構えるラッセル・クロウとの対決もぞくぞくした。特に、泥まみれの顔に光るバルジャンの眼光といったら、さすがのジャベールもたじたじで、ああこれで決定的にジャベールは自分の支えを失ったんだなと納得。
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全編を通して、ジャン・バルジャンを中心に話が展開されていくが、バルジャンとジャベール、どちらにも正義と信念があるように、主要な登場人物のそれぞれの背景に深みがあり、どの人物にも共感できる。それが、この群像劇が稀有な点だと思う。改めて、やっぱりユゴーの筆力はすごい。
かつてコゼットを主役にしたアニメがあったように、登場人物の誰にフォーカスしても成り立つ物語だと思うので、宝塚の「ベルサイユのばら」みたいに、例えばジャベール編とか、マリウスとアンジョルラス編などのアプローチも見てみたかったりする。

日本では4月から新演出版のミュージカルが帝国劇場でスタートするとのこと。すでにプレビュー公演のチケットは押さえ済みだけど、たぶん1回では物足りないので、6月か7月にももう一度観に行くことにしようかな。

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<「レ・ミゼラブル」に関する過去のエントリ>
★英国遊学紀行「ミュージカル・レビュー」
はじめて観たのは2005年のロンドンだったなあ。あまりの衝撃に、2回観に行ったっけ。
★「ヴィクトル・ユゴー記念館」
これも2005年なので、きっとロンドンで観てすぐに、パリに行ったんだろうな。当時のわたし、すごい行動力だ。
★「2年ぶりの再会」
で、次は2007年に帝劇で。あとは2011年の旧演出お別れ公演を2回。これは夫と観たり、友人と観たり。ああ、レビュー書いてないな…。
by chatelaine | 2013-01-22 23:03 | CINEMA

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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