韓国ミュージカル『ウェルテルの恋』レビュー/美形の甘美なる苦悩

赤坂ACTシアターで上演中の韓国ミュージカル『ウェルテルの恋』を観に行ってきた。
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原作は言わずと知れたゲーテの「若きウェルテルの悩み」。
実はきちんと読んだことはないのだけれど、ひたすらウェルテルが人妻相手の叶わぬ恋に煩悶して、独りよがりとも思える恋の結末を迎える、というあらすじだけは知っていて、ミュージカルもほぼそのとおりに進行する。

ゲーテは純朴で繊細なドイツの詩人というイメージが強いのだけど、本作はほとんどゲーテの自叙伝というだけあって、ウェルテルはまさにゲーテそのままという感じ。しかし当時はこの本が社会現象になったというのだから、この真面目な純情型はドイツ人の気質というものなのか。
(イタリアやスペインのナンパ気質とはまったく逆だよね)

若きウェルテルの悩み (岩波文庫)

ゲーテ / 岩波書店



本作は韓国発のミュージカルなので、日本語字幕を追う感じなのだが、今回は座席が前方中央だったため、左右の字幕を読むたびに舞台から目をそらさなくてはならず、なかなか集中できなかったのが残念。
ただ、その代わり、役者陣の表情がつぶさに見えた。

役者陣はダブルキャストで、わたしが観た回のウェルテル役はキム・ダヒョン。シャルロッテ役はキム・ジウ。
この主演のキム・ダヒョンがたいそう美形なので、前方でかなり見ごたえがあった。特に、憂いのある表情や、ストーカーっぽさまで彷彿させるような一途な視線などは、観ているこちらまで心をギュッとつかまれたような気がする。美形の苦悩する姿には萌えるわね。

彼の歌もなかなか聴かせるなあと感じたんだけど、シャルロッテの婚約者・アルベルト役のイ・サンヒョンがさらに上手で。
アルベルトは善良で真っ当な紳士なのだけど、ウェルテルの無礼さにブチ切れるシーンとか、ここぞというときの存在感がすばらしかった。歌もいでたちも迫力があり、そう、怒らせると怖いタイプの人ね…。

ヒロインのシャルロッテは、わかってはいたけれど、原作のキャラクター設定からしてさほど感情移入できず。
そもそもこの時代に書かれたヨーロッパの恋愛小説のヒロインって、煮えきらなくて、主体性がなくて、わたしからするとまったく魅力的に見えない・・・。
「椿姫」も「マノン・レスコー」も、男が勝手に入れあげるんだけど、その魅力といったら美しさだけ?みたいな。まあ、当時の女性観がよくわかる。


で、肝心のウェルテルの恋の方は、詩的な表現のせいか、きどったセリフが多かったように思えたが、対照的に、農夫カインズの恋は直情型で情熱が伝わってきた。カインズが捕まるシーンは私的に一番の見せ場。

カインズの独白、「心の目で恋をした。今は灰が残って、わたしの心は静寂です」という意味のセリフに、ほろりときてしまった。
一度だけでも本当の恋を成就すれば、それだけであとは死をも覚悟できるとは。一生分の愛をしたんだなあと。

全編にわたり、繊細でセンチメンタルでロマンティックで詩的なことばに聞き惚れながら、ウェルテルの甘美なる苦悩を味わった2時間だった。
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※写真は許可をもらっての撮影です。
by chatelaine | 2013-01-12 23:14 | STAGE

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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