夜間特別鑑賞会『美術にぶるっ!ベストセレクション 日本近代美術の100年』/第Ⅰ部レビュー

竹橋の東京国立近代美術館(以下MOMAT)で開催されている、『美術にぶるっ!ベストセレクション 日本近代美術の100年』の夜間特別観覧会に行ってきた。
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まず、奇抜な展覧会タイトルだなあというのが第一印象。
(美術で身震いしたこと?ありますともありますとも。ただし、そのほとんどがヨーロッパで観たものですが…。)

MOMATは、なぜか無機質な印象をぬぐいきれず、また所蔵の美術品が(当然ながら)日本のものメインということで、ヨーロッパ偏重のわたしはなかなか触手が伸びず、これまであまり足を運んだことのない美術館だった。
日本で最初の「国立」美術館だそうだが、今回60周年ということで、なるほど、そうすると今回のテーマでもある「戦後」と切っても切れない美術館だ。

今回の企画展では、「MOMAT コレクションスペシャル」と「実験場1950s」の二部構成になっており、のけぞるほど膨大な展示量、かつ写真撮影も可能な内覧会だったので、2回に分けてレビューしたいと思う。

    *       *        *

まずは第Ⅰ部「MOMAT コレクションスペシャル」だが、スペシャルもスペシャル、その展示量に圧倒される。こんな物量作戦にやられたのは、国立博物館の『北斎展』以来か。2時間かけても観きれない量で、なおかつどれも一級品となれば、気が抜けない。
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4階のフロアから入ってすぐの「展示室1」は、いきなり「ハイライト」と銘打った内容で、重要文化財たちが出迎えてくれる部屋。かなりインパクトがある作品が並んでいて、のっけから気分が高揚する。
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ここで見入ってしまったのは、横山大観の「生々流転」という水墨画の絵巻物。いやはや、絵巻物って、そして水墨画の濃淡って美しい、と感じる自分にもぶるっ!わたしも侘び寂びがわかる年齢になってきたのか…。


続いて、同じ4階の反対側のフロアには、「展示場2~5」として、藤田嗣治、岸田劉生、佐伯祐三…など、美術の教科書で見たことのある芸術家の作品のオンパレード。とりわけフジタは大好きな作家なので、思いもかけず、あの乳白色が観られてうれしかった!
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もっと、一点一点じっくり味わいたかったのだが、とにかく展示の全体量がつかめないので、後ろ髪を引かれながら先を急ぐことに。
彫刻の展示なども織り交ぜつつ、順路の3階へ。


3階でわたしが惹かれたのは、「展示室7~8」の「戦争の世紀に」と、「展示室10」の「日本画」の展示。
なぜ戦争画にこんなに心を揺さぶられたのかわからないけれど、大きなカンバスから発せられる悲しい迫力のせいだろうか。
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ここでのフジタの作品「アッツ島玉砕」と「サイパン島同胞臣節を完うす」は、玉砕を描いているせいか、パリ時代の作風とは全く異なり、別人が描いたかのように悲壮感で満ちている。そして案の定、赤子を抱いた母親の描写に共感してしまう。

併せて、戦時中の美術界の様子などにも興味がわいてきた。おおむね戦意高揚のために描かれた作品が多いみたいだけど、反戦的な作品はなかったのかしら…とか。また、岡本太郎の「夜明け」という作品も、この部屋に分類されていたのが興味深い。


隣の日本画のコーナーでは、ついに噂の上村松園の「母子」と邂逅。本作は、今年行ったMOMATの人気投票で1位だった作品だとか。上村自身の母親をイメージした作品らしく、確かに情感豊かな作品である。
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また、この部屋には、いくつかの屏風絵が展示されており、なかでも加山又造の「春秋波濤」という作品には目を奪われてしまった。繊細なタッチで描かれた、桜(春)と紅葉(秋)が同時に存在する矛盾。屏風全体を覆う、大胆な波の文様。
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あとは、小茂田青樹の「虫魚画巻」という絵巻物にもぶるっ!ときた。こちらに描かれているのは、蛙、夜の蜘蛛、鯉と金魚、灯に集まる昆虫、鰻とどじょう、軒下の蜘蛛の6図。人間から見るとどれも小さな生き物だけど、その儚い美しさは必見、見とれました。わたしは夜の蜘蛛が好き。
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日本画にはまったく疎いのだけど、美しいものを観るとほんとうに、満たされた気持ちになる。知らない世界でも、貪欲に開拓したいものだな、と改めて。


さて、絵巻物の美しさに忘我たる心地で2階に降りると、一変して前衛芸術と海外作品のフロアとなる。
「展示室11~12」は「疑うことと信じること」という内容で、草間彌生や荒川修作などの作品が、観る者を試すように並んでいる。
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アヴァンギャルドの時代になってくると、いつものとおり、何が「美」なのかよくわからなくなるのだが、わからないなりに楽しむことはできる。「(既成の美の概念を疑うような)斬新な発想=芸術」として評価された時代、評価の軸も揺らいただろうな、と思う。

続いて、「展示室13」は「海外作品とMOMAT」というタイトル。ここで第Ⅰ部は終了となり、このあたりでもう集中力が切れてくるわけだが、そんな中、記憶に残ったのは、パウル・クレーの作品群。なるほど、音楽(リズム)を絵画で表現した、というのがよくわかる。
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さて、ここまででも、かなりのボリュームなのだが、次の第Ⅱ部「実験場1950s」は、日本の1950年代にフォーカスした、さらにディープで凝縮された企画展なのであった。

<第Ⅱ部へ続く>
by chatelaine | 2012-11-14 23:13 | ART

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


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