『巨匠たちの英国水彩画展』レビュー

渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の、『巨匠たちの英国水彩画展』に行ってきた。
会社帰りに、閉館前の1時間で駆け足鑑賞したのだけれど、ラファエル前派好きとしては1時間では足りず、もっとじっくり観たいと思える内容だった。しかし、ターナーやミレイときて、ウォーターハウスが来ていなかったのは、個人的にはとても残念。
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前半は建物や風景などの水彩画が並ぶ。とりわけ、わたしは建築物にめっぽう弱いので、大聖堂のアーチ、尖塔、崩れた廃墟や遺跡…どれをとっても美しく、英国への懐かしさが募る。ガーディンの「ピーターバラ大聖堂の西正面」などを観ながら、かつて訪れたカンタベリーの大聖堂の姿を、記憶の彼方からたぐりよせれば、ここはもう英国(気分)!

そんな18世紀の英国人が憧れたのが、ルネサンスの都・イタリアである。この時期に、アルプス山脈を越えるルートが確立されたことから、旅行が流行りはじめたという社会背景があるそうだが、絵画でも、イタリア、さらにその先のエジプトやインドへのグランド・ツアーがテーマとなり、旅行先の風景や自然が、憧憬とともに描かれている。

それにしても、旅行画家って、つくづくすてきな職業だと思う。日本での、旅する絵描きといえば山下清だけれど…いや、「旅行」と「放浪」とはちょっとニュアンスが違うか。


中盤は、ウィリアム・ターナーの独壇場コーナーが設けられており、水彩画の歴史におけるターナーの人気がありありと感じられる。
特に、「旧ウェルッシュ橋、シュロップシャー州シュルーズべリー」という作品の、水面に写った風景の透明感は、水彩画の美の極みであり、素直に美しいと思う。

けれども一方で、これは完全に好みの問題だが、ターナーの描く風景画はクセがなさすぎて、魔力が足りない…といっては無礼だろうか。わたしはやっぱりロセッティやミレイの描く、幻想的な人物画に惹かれてしまうのだ。 たとえば今回であれば、ロセッティの「窓辺の淑女」という作品は、「淑女」というタイトルでありながら、妙に悪魔的な色気があり、とても魅惑的である。


後半は、再び自然風景の絵が続き、最後はターナーの「濡れた浜辺に沈む夕陽」という作品で終了。
ターナーにはじまり、ターナーで終わる…まるで来年、東京都美術館で開催予定の『ターナー展』への序章のように思えたが、そこに行けば、彼の歩んだ人生がわかると共に、理解が深まるかもしれない。そんな期待を抱かせてくれる終わり方だった。
by chatelaine | 2012-10-25 23:32 | ART

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