映画化される日はくるか?

先日行ったセミナーで、弁護士の先生が、これはいいですよと紹介していて、書店で見かけたので読んでみることに。『下町ロケット』の作家さんで、その評判は聞いていたけれど、面白くていっき読みしてしまった。

池井戸潤『空飛ぶタイヤ 上/下』講談社文庫 読了

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

池井戸 潤 / 講談社

今年8作目

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三菱自動車のリコール隠しを題材にした経済小説、というと、なんだか小難しそうだが、主人公は町の小さな運送会社の社長。走行中にトラックのタイヤが取れて、歩行者に激突。歩行者は即死、というなんともショッキングな事故から物語がスタートするため、とても入り込みやすい。

タイヤが飛んだ原因は、整備不良か欠陥か。
中小企業の運送屋vs財閥系大企業、という構図で、被害者一家・警察・マスコミ・従業員・子どもの学校を巻き込んだ形で、主人公にとっては、勝ち目のない闘いが始まる。

しかし、とにかく主人公の赤松社長が不屈。事故の影響で四面楚歌となっても、人間はこんなに強くなれるのかと胸が熱くなる。
そして、それ以上に、適役であるホープ自動車(三菱自動車)の描写が克明で面白い。「外向きよりも内向き」とあるが、社内のパワーバランスが第一で、客を客とも思わない。同列会社の銀行にも横柄で不遜、こんなに嫌な奴が本当にいるのかと、こちらも信じられないくらいの人間のいやらしさを見せてくれる。

もちろん、大企業ゆえ、いろんな種類の人間がいて、愛社精神より内部告発をする者もいれば、出世欲と良心とに悩む者もいる。個人的に、なかなか正義にも悪にもふりきれない者としては、この葛藤する社員に一番共感できたかな。弱いなあ、でもこれが大多数の人間だよなあ、という。


それにしても、すぐにでも映像化されそうなストーリなのに、いまのところ映画化もされていないのは、作中で週刊誌の記事がもみ消されたように、三菱というスポンサーを気にして、というところだろうか。(民放ではなく、WOWOWではドラマ化されたそうだけれど)
それを考えると、山崎豊子などの社会派小説は、ドラマ化・映画化はもちろん、小説にすること自体、勇気あることだと思わされる。本作もいつか映画化される日がくる、か?
by chatelaine | 2012-09-07 23:43 | BOOK

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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