『おとなのけんか』レビュー/審判なしのガチバトル

ロマン・ポランスキー監督最新作『おとなのけんか』を観てきた。ヤスミナ・レザの戯曲『大人は、かく戦えり』の映画版で、原作は日本でもすでに舞台化されている。
どちらも味わい深い邦題。

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こどものけんかの和解のために話し合うべく集まった2組の夫婦が、次第に大人の理性を忘れ、普段からの夫婦間の不満や、抱えていた我慢が爆発し、壮絶な舌戦に発展していくという、皮肉でコミカルなストーリー。
あくまで言葉の応酬であって、手が出ないのは、こどものけんかと違うところだが、「顔で笑って、心で殺意」とはみごとなキャッチコピー。ある意味、こどものけんかより始末が悪い。

本作は、被害者の親と加害者の親という、4人しか登場しない密室劇ゆえ、作品の出来はキャストにかかっていると言っても過言ではない。

被害者の両親にジョディー・フォスターとジョン・C・ライリー、こちらは自称・人権派の作家と金物屋の夫婦。
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加害者の両親にケイト・ウィンスレットとクリストフ・ヴァルツ、こちらは投資ブローカーと弁護士という、キャリア夫婦。
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最初は、社会の勝ち組・負け組的構造の対立で試合のゴングが鳴るのだが、蓋を開けてみると、夫婦間での対立や、男女間での対立と、どんどん組む相手が変わってバトルが続くのが面白く、ともすれば冗長になりがちな密室劇だが、飽きさせない展開になっている。

クリストフ・ヴァルツ演じる弁護士の、何度も何度も鳴り響く仕事の携帯電話に、気まずくなる雰囲気の一同。ダメ押しに、ケイト・ウィンスレットが、場を和らげるために出されたお手製のケーキを食べたあと、気分が悪いと嘔吐してしまう。それも、インテリ作家を自認するジョディー・フォスターお気に入りの画集の上に。

ジョディー・フォスターの怒りを押し殺した、わなわなと青筋を立てる表情の恐ろしいこと!
リベラルでものわかりのいい良人を演じていた、ジョン・C・ライリーのブチキレ顔のせいせいすること!
酔っ払ったケイト・ウィンスレットの、愉快だけれど迷惑なこと!
淡々とマイペースだったクリストフ・ヴァルツの、携帯を失ったときの子どもみたいに落ち込む様子といったら!

4人の豹変っぷり、というか、素の姿が次々と暴かれていくのが面白い。
そして、4人の中で、一番、「良識の塊」であるようなジョディー・フォスターが、お酒に酔えないというのもうまい設定で、酔いたいのに酔えない・ハメを外したいのに外せないタイプの人間の哀しさを、コミカルかつイライラと演じていて最高だった。

でも、わたしが思うに、ここまで腹を割ってぶっちゃけバトルをしたこの4人は、このあと大親友になれるんじゃないかと。たとえ個人の主義主張を分かり合えなかったとしても、もはや彼らの間では、うわべの「良識」を気にすることはないのだから。
by chatelaine | 2012-03-12 23:55 | CINEMA

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko
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