今週の3冊

今日はまとめて小説レビュー。

京極夏彦『絡新婦の理(じょろうぐものことわり)』講談社文庫 読了

京極作品でも、最も分厚い本作ですが、後半半分は、いっき読み。一度京極ワールドに入ってしまうと、なかなか抜け出せないんですよねぇ。中盤、それまで個々で断片的に起きていた事件が、一つの筋にまとまる瞬間があって、そこからはもう、取り付かれたように読んでしまいました。

「交錯しているようで乖離している。点で交わる以外は全く重ならない。それなのに多分この二つの事件は同じ根を持っている」

というパターン。これは、京極作品ではいつものことですけど…どうやったらこんなに複雑な構造のストーリーを思いつくんでしょうねぇ、作者は。

特に今回の、「蜘(=犯人をも超越した俯瞰者)」の存在は、かなり怖かったです。探偵や拝み屋、そのほかどんなファクターが関わっても、全体の結論が変わらないのならば、いったい個人の意味は何なんだろうと思いました。

「この事件はね、君の知っている多くの事件とは基盤となる原理法則が異なっている。仮令誰がどんな形で関わろうと、結果は多分――同じなんだ」
「僕なんかの出る幕はない――違うな――そうじゃない、僕が出ても状況は何等代わり映えしないと云った方がいいかな」

積極的に自分のまわりの出来事に関わっても、大勢に影響がないとすれば、人の生きる意味・人と関わる意味とは何なんだろう、と考えさせられました…なんかむなしい。

あと、謎解き以外に仕入れた知識。性差別と女権拡張論(社会学)・夜這いの風習と羽衣伝説(民俗学)・キリスト教悪魔崇拝(宗教)・窃視症(精神医学)…今回も濃厚かつ盛りだくさん!


三島由紀夫『不道徳教育講座』角川文庫 読了

三島って、エッセイはわりと健全なんですね(笑)。「不道徳」といいつつ、今の社会ではそこまで過激な内容ではないですし。小説で見られる美文調も抑えていて、話し言葉で書かれているので、三島が苦手な人でも読みやすいと思います。

とはいえやはり、三島的シニカルな表現も、随所に織り込まれていて。

「ハリウッド・スマイルという痴呆的微笑」
「支配層のインテリの肉体的無教養」
「(キリスト教の坊主について)肉体を完全に包んだゾロリとしたあの黒い法衣は、男の着るものではなく、精神的宦官の着るものです。キリストは痩せこけてはいても、まだ裸なだけマシというものだ」

最後のは、ぷぷっと吹き出しました。精神的宦官!まったくサヴォナローラあたりに聞かせてみたいわ。


塩野七生『コンスタンティノープルの陥落』新潮文庫

春にトルコへ行こうか迷っていて購入したものの、結局就活で行けず、本棚の奥に封印していたのを、ようやく解禁。やっぱり塩野七生の文体は、目が覚めるわぁ…。淡々と、事実を並べて書いているのに、どうしてこんなに引き込まれるんだろう。当分、朝の電車はこれですね。
by chatelaine | 2005-06-12 23:30 | BOOK

◆◆管理人:yukiko ◆◆欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


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