試写『ディパーテッド』レビュー/ネズミの人生

ジャック・ニコルソンが好き、と言い続けていた成果が出たのか、試写会のチケットをもらって、『ディパーテッド』を観にいった。

ディカプリオとマット・デイモンも、悲壮感というものを背負って立つことができる俳優になったのか…と、やや感激。
ニコルソンほどキテレツにならなくてもいいけれど、ハリウッドスターたるもの、華やかさだけでなく、憂いや毒というものを秘めていないと。


オリジナルの『インファナル・アフェア』三部作を観たのは、もう3年ほど前になるのだろうか。おぼろげにしかストーリーを覚えていなかったが、とてもよくできた脚本だな、と感じたことは覚えている。そして無常観の具現ともいえる、トニー・レオンの存在も忘れがたい。
本作もその脚本そのままに、ニアミスする男たちにハラハラさせられる展開が続く。


「死んだほうがマシだ」とはよくあるセリフで、まさにオリジナル版は、けれどもそういった安いセリフを使わずに、死ぬよりもつらい生を描いていた。
そして、え、苦しんだあげくこんなに簡単に死んでしまうの、というような、あっけない死。

…観終わった後、なぜだか、トニー・レオンのはにかんだ笑みが、浮かんで消えた。


【以下、ネタバレあり】





オリジナルとの比較はナンセンスだが、良くも悪くもアメリカナイズされていたように思う。
特に、カウンセラーの女医が二人ともと関係をもつところなんて、最たるもの。お腹の子どもはもしかして…という含みを持たせつつのラストに、アメリカにプラトニックな愛というものはないのかしらんと。

そして、ジャック・ニコルソンは、彼にはよく言われることだが、今回は特にオーバーアクトではなかったか。主演ならまだしも…助演なのだから、もう少し、もう少し抑えていただきたかった。
彼の演技は腹八分目。物足りないくらいで、ちょうどいい。


エレベーターからの怒涛の展開は息を飲んだけれど、あの状況をみていると、命ってあっけないと思わざるを得ない。
取り戻そうとした人生が、しがみついた生が、一発の銃声で死に変わる瞬間。

できることなら、その瞬間のディカプリオ/マットの表情を見たかった。ニコルソンの死に顔は…怪物的というか、まるで『バットマン』のように強烈だったけれど。


ラスト、ネズミのアップに微苦笑する反面、「ネズミ」の生きざまを描いた作品としては、気の利いた終わり方だったのか、とも思う。
まぁ、あんなに綺麗なマンションに、あんなに艶やかなネズミがいるなんて、なんだか場違いな気もしたけどね。
by chatelaine | 2007-01-10 23:23 | シネマ

◆◆管理人:yukiko ◆◆欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko