センチメンタル、パリ旅行

遅めの夏休みをもらって、パリに飛んだ。
一年ぶりのパリは、街自体はかわらず美しく洗練されていたけれど、わたしの方の環境の変化が大きくて、ついつい感傷的になってしまった。

モネの睡蓮の色、ステンドグラスが夕陽を受けたときの光と色、マロニエの葉がざわっとゆれて落ちる音、セーヌ河の湿ったにおい、夕暮れの雨のにおい、教会の静謐なオルガン、公園の天使みたいな子どもたちの喧騒、メトロのアコーディオニスト、珈琲からたちのぼる湯気、カフェで読む須賀敦子、ギャルソンのウィンク…。

思い出すままに列記しただけでも、感覚が鋭敏になって、ほんのちょっとしたことで泣き出しそうなほど切なくなる瞬間がたくさんあった。


学生時代には永遠に続くように感じていた美術や文学という虚構の世界が、ビジネスという実学の世界に入って毎日過しているうちに、遠くへ遠くへ行ってしまい、以前ならひょいと手を伸ばせば捉えられた感覚が、今では手のとどかないところへ行ってしまったさみしさ。
それも、自分では気づかないうちに。

「新入社員のうちはがむしゃらにつき進むものだ」とは先輩諸兄の談で、たしかに猪突猛進さは新人の専売特許だと思うけれど、ほんとうにこれでいいの?という自問はもっていたい。
猛進はできても、妄信はしたくない。自分をふりかえる時間がほしい。


・・・というようなことを、パリの名前もわからない教会の椅子で悶々と考え、ああまた不毛な思考をしていると自覚しつつも、そういう時間こそがわたしには大切だったりする。

こうやって、なんの実にもならない虚構の世界をめぐる時間をつくりだすには、やっぱり旅という環境、もしくは欧州の街独特のアンニュイモードが必要みたい。
この旅で、虚と実のバランスをとって、うまくやっていくすべが、見つかった気がする。
by chatelaine | 2006-09-30 02:41 | EUROPE

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko