『炎上』および『憂国』レビュー/三島由紀夫映画祭

明日の研修は遅番にしてもらったので、久しぶりに夜ふかしもいいだろうと、キネカ大森で開催中の三島由紀夫映画祭に行ってきた。
意外と、学生風の若いお客さんが多いことにびっくり。

学生のときは、キャパオーバーになるのが嫌で、映画は1日に1本、と決めていたけれど、働き出すと時間の融通がきかなくなってしまい、観れるときに観ておかねばならなくなった。
今日はせっかく大森まで来たのだからということで、2本立てで観ることに。

ここでは、原作との比較はいたしませんのであしからず。


『炎上』(58)
言わずと知れた三島の代表作、『金閣寺』の映画版。なにやら裏で物議があって、「金閣寺」という名称が使えなかったらしい。

どもりというコムプレックス(←こういう表現がしたくなる)をもつ、内向的な主人公・溝口を演じた市川雷蔵が見事!目だけでおどおどとした人格を表現していて、私の中の溝口像と、ぴったり合ってしまった。

一方で、もうひとりの障害者の登場人物である戸刈(仲代達矢)が、普段は足の悪いことを逆手にとって、世間の同情を利用していたはずなのに、愛人に「片端もの!」とののしられて、瞬時に目の色が変わる、その表情も秀逸。


愛してやまないものを、他人に汚されるぐらいなら、いっそ自らの手で滅ぼしてしまえ!(おこがましくも、『金閣寺』のテーマを超超超超単純化すれば、こういうことではないかしら…)
と、いう妄念で、驟閣寺(金閣寺)に火をつける溝口。
ハリウッドのように、ガソリンをバーッとまくなんてことはせず、火がゆっくりゆっくりと燃え広がる演出も、新鮮な印象を受けた。

ラストの驟閣寺炎上シーンは、モノクロなのに叙情的で、滅びの美学、ここにみたりという感じ。モノクロの火の粉って、煙って、あんなに美しいものなのね…。



『憂国』(67)
三島本人が主演する30分の短編。
なんと、セリフがいっさいなく、ひたすらワーグナーの音楽が流れている。寝てしまうかと思いきや、思った以上にエログロで、眠くなるどころじゃなかった。

本作は、三島の切腹シーンがメインと思われるのだけれど、切腹って、よく時代劇でみるように、グサッと刺しておわりというような、そんなキレイなものじゃないの。

たしかに、切腹するという武士道精神は美しいかもしれないけれど、実際、行為としての切腹は、もっとドロドロしていて、脂汗もだらだら出るし、血もどくどく出るし、なかなか死にきれないし、果ては腸や内臓も飛び出すし…そりゃR18指定だよ。

だいいち、三島主演で切腹シーンというのが、どうしたって三島本人の死にざまと結びつく。まるでドキュメンタリーのような映像。

三島演じる武山中尉のあとを追う、麗子夫人の自殺は美しすぎたけど…。毅然として夫の死に立会い、夫の返り血を浴びた着物で、死に化粧をし、寄り添うように死に至る夫人。
これが三島の美学、ひいては、男のロマンなのかしらねぇ。

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「もし、忙しい人が、三島の小説の中から一編だけ、三島のよいところ悪いところすべてを凝縮したエキスのような小説を読みたいと求めたら、『憂国』の一編を読んでもらえばよい」(三島由紀夫)
by chatelaine | 2006-04-13 23:49 | CINEMA

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko