理想の女性のつくりかた

細く、長く、連綿と続いている私的三島ブーム。もはや生活の一部なのかという懸念を抱きつつ、来週は劇団四季の『鹿鳴館』を観にいくし、またまた小ピークが来そうな予感。

三島由紀夫『女神』新潮文庫 読了

軽い気持ちで読めるようにと、短編集を購入。表題作の『女神』のほかに、10編を収録していて、能楽を題材にした『恋重荷(こいのおもに)』、オペラ「マダム・バタフライ」を題材にした『蝶々』など、劇作家としての顔も垣間見える。偶然にも、私が唯一知っているといっていい能楽『恋重荷』が収録されていることに、心くすぐられつつ…。

やっぱり、『女神』が一番おもしろい。というか、今まで読んだ三島作品のなかで、ストーリーの面では一番好きかもしれない。

かつて、自分の妻を理想の女性(=女神)へと教育した男が、その妻が空襲の火傷で醜くなってしまうと、今度は娘を女神に仕立てあげていく、という、男のロマン(?)的なこの話。もちろんそこには財力が必要だけれど。


私はこういう「紫の上ストーリー」が嫌いではないし、ヨーロッパ上流階級かぶれの父親に、礼儀作法や社交術や帝王学を植えつけられて成長していく贅沢さに、いたって一庶民的な教育しか受けなかった私は、ほのかな憧れすら抱くのだけど、この父親の徹底ぶりには…。

「周伍は娘が、アメリカ渡来のコカコーラやオレンジ・ジュースをのむことを絶対に禁止した」
…出たぁ、アンチ・アメリカイズム。私もコーラは禁止されていたけどね。歯が溶けるとか言われて。

「朝子は、女の注文すべきお酒は、まず第一に女のお酒、リキュールやワインやキュラソーや甘いカクテルでなければならぬこと、第二に、その日着ている洋服の色に合った色でなければならぬということを父からきつく教えられていた」
…日本酒好きとしては、耳が痛い。でも、日本酒なら無色透明だから、どんな洋服にも合いますぞ。


と、こんな調子で、食べ物飲み物から、音楽、読書、スポーツ、芸事、語学、会話、立ち居振る舞い、すべてにおいて、父親の目が光っている。
面白いのは、それを受ける娘・朝子が、父の教えに反抗するわけでも甘んじるわけなく、ただひたすら美しくなっていくことだ。

「周伍がもっとも苦心を払ったのは、ほんの二言三言言葉を交わしてその場を立ったのちも、香水の薫りのようにその女の雰囲気があとに漂う、そういういいしれぬ雰囲気を朝子に賦与することだった」

ここまできたら偏執的ですらある…でも、この「いいしれぬ雰囲気」こそが、三島自身が書き続け、登場する女性たちに求め続けた「優雅」というテーマなんだろうな、と妙に納得。
by chatelaine | 2006-02-11 23:11 |

◆◆管理人:yukiko ◆◆欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


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