不健全な恋愛

先日、書店で目にするなり購入してしまった、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』という橋本治の評論。読み進めるうちに、やっぱり三島作品を読破してからの方が面白いのだろうと思い、未読だった三島作品を読んでみることにした。

とりあえず、近場の書店で目についた3冊を購入するも、ストーリーの先が気になって、あっという間に読んでしまった。三島なんだから、その美文をもう少し精読すべきだったかな…。

しかしながら、三島を読むと、不健全な恋愛がしたくなりますな!


三島由紀夫『愛の渇き』新潮文庫 読了

橋本氏によれば、「『愛の渇き』は、つまらない作品である」そうだ。
それを知ったうえで、あえて本書を選んだ私もどうかと思うが、「つまらない」と言われれば読んでみたくなるのが、ひねくれ者の考えることで。それに、橋本氏の「つまらない」発言は、皮肉を効かせているニュアンスだった(と思う)から。

しかしまあ、たしかにそう面白いという内容ではなかった。三島作品で、主人公に感情移入するなんてことはまずないわけだけど、本作はそれがいちだんと顕著。
主人公がひとりよがりもいいところで、ちょっとその妄念に息が苦しくなってしまった。

「……私はひとまず私の冷静な判断に従おう。三郎を見るのは、もはや私には苦しみであって喜びではない。しかし三郎を見ないでは、私は生きられない。三郎はここを去ってはならぬ。そのためには結婚させなければならない。私と? なんという錯乱だ。美代と、あの田舎娘と、あの腐れトマトと、あの小便臭い馬鹿娘と、だ!そうして私の苦しみが完成される。私の苦しみは完全なものとなる」

腐れトマトって…!(笑)三島が書くと、腐ったトマトも耽美な気がしてくるわね。不思議。


三島由紀夫『美徳のよろめき』新潮文庫 読了

このタイトルがいかにも三島的。発表当時は、「よろめき」が流行語になったそうで。
『愛の渇き』よりも俗っぽいせいか、いや、三島を俗っぽいと言っていいのかという疑問はあるけれど、こちらは楽しんで読めた。

現代の感覚ではメロドラマもいいところ、愛人とのあいびきにふける夫人。愛人の子供を二度も堕胎するのだから、美徳どころか悪徳なのだけれど、それでも夫人は汚れることのない描写をされている。
三島の描く美徳って、世間一般のいわゆる「美徳」の基準とちがうのね。あるいは、アイロニーか。

「男の野心や、仕事の情熱や、精神的知的優遇や、そういうものには節子は何らの関心がなかった。あふれるばかりの精力を事業や理想の実現に向けている肥った醜い男などは何という滑稽な代物であろう。
…(略)…仕事に熱中している男は美しく見えるとよく云われるが、もともと美しくもない男が仕事に熱中したって何になるだろう」

三島さん、手厳しい…。


三島由紀夫『禁色(きんじき)』新潮文庫

半年くらい前に、伊藤キムの振り付けで、『禁色』のコンテンポラリーダンスの公演がうたれていたっけ。一体この屈折した男性の心理小説を、どんな振り付けで表現するのか興味津々だったのだけど、お財布に余裕がなかったのね…。

橋本氏によると、本作は三島を読み解くのに欠かせない作品らしい。
さー、これから読みますかな♪
by chatelaine | 2005-11-29 23:15 | BOOK

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko