一日のはじめに

これまで、朝の電車で読んで、失敗したと思った小説はというと、ドストエフスキーと太宰である。一日のスタートにしては、内容が暗すぎるからなのだけど、ラディゲも朝から読むには、ちょっと刺激が強すぎる気がする…。


ラディゲ『肉体の悪魔』新潮文庫 読了

ラディゲは難しいと聞いていたけれど、思ったよりも楽に読めた。ずっと一人称だからかな、少なくとも、私にはコクトーの方が難解だった。
一人称な分、鬱々と主人公の気持ちが乗り移ってくるので、鬱陶しいといえば鬱陶しいけど。

ただ、揺れ動く主人公の気持ちをずっと把握することができるので、この手の心理小説は好きだ。
ラディゲはそこへ、自分の哲学めいた格言をところどころに織り交ぜていて、いつのまにかその葴言に、ふんふんとうなずいている私がいる。

「従容として死に直面するということは、一人の場合でなければ、問題になりえない。二人で死ぬるのは、神を信じない人々にとっても、それはもはや死ではない。悲しいのは、生命と別れることではなくて、生命に意義を与えるものと別れることである。恋愛がわれわれの生命であるときは、一緒に生きていることと、一緒に死ぬこととのあいだに、どんな相違があろう?」

…これは恋愛でなくても言えることだと思う。なにか生きがい、歌でもスポーツでも、なにか「これが私の生きている証」というべきものを失ったときの方が、人はダメージが大きいから。それこそ、喪失の絶望が、肉体の死を望んでしまうほどに。


本作の主人公が、三島由紀夫の『豊饒の海 ~春の雪』の主人公・清顕に似ていると思ったのは、最近映画版を観たせいだろうか。それとも、ラディゲに傾倒していた三島が、本作のエッセンスを自作に取り入れたからだろうか。

とにかく、二人とも、幼いくせに誇りだけは高い。そして、二人とも、本来ならば愛してはいけない人と、愛をしてしまう。
きっと彼らは、「愛してはいけない」という禁があるゆえに、どんどん愛の深みにはまっていくのだろうな。


本書には、本編以外に、戯曲『ペリカン家の人々』、コント『ドニーズ』が収録されているけど(っていうか、コントって喜劇ってことでいいのかな?)、両方ともあまり笑えなかった。
どうやら私には、フランス上流階級のユーモアとエスプリを感じ取る能力が欠けているらしい…。
by chatelaine | 2005-11-05 23:54 | BOOK

◆◆管理人:yukiko ◆◆欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


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