入院のおともに森博嗣本

体調を崩して入院してしまった5日間(点滴ですっかり回復)で、森博嗣のVシリーズを読み進めた。5冊読んだところでめでたく退院の日になったので、残りの5冊はおいおい読もうかと。

それにしても、8年前に入院したときは、病棟の売店にあった限られた本の中から選ぶしかなかったのに、今回、kindleとスマホがあれば入院生活もまったく退屈しなかった。もともとあまりテレビを見る方ではないけど、一度もテレビをつけなかったことにも我ながらびっくり。

Vシリーズは、S&Mシリーズと比べて読み応えに欠けるという評判を耳にしたけれど、入院中の退屈な日々には十分わくわくする内容だった。


1.「黒猫の三角 (Delta in the Darkness」
語り手のトリック(地の文のトリック)とでも言えばいいのだろうか、語り手であったはずの人物が途中で入れ替わっており、あまつさえ犯人だった、というのが本作最大のトリック。ちょっと卑怯な気がするんだけど、「名前」は記号でしかない、というのがテーマなのか?そう考えると、登場人物たちの名前がやたら小難しいのも、「名前に意味はない」という筆者の意図なのかもしれない。
とにかく、語り手が信用できないというシリーズと認識して、2巻以下を読み進める。

2.「人形式モナリザ (Shape of Things Human)」
事件よりも、紅子と元夫・林のやりとりから目が離せない1冊。萌絵と犀川との関係性よりも大人なふたりだけに、彼ら(愛人の七夏も入れれば3人)の過去と今後が気になる。
肝心の事件の方は、黒幕を示唆するラスト一行が意味深すぎてぞくぞくさせる。

3.「月は幽咽のデバイス (The Sound Walks When the Moon Talks)」
森氏お得意の密室モノだと思いきや、事件としてはちょっと肩透かしな結末。部屋の見取り図がないので想像で読み進めるしかなく、途中でトリックを考えることを放棄してしまった。秘密の地下室に潜入するシーンだけはドキドキしたな。

4.「夢・出逢い・魔性 (You May Die in My Show)」
前シリーズの「封印再度(Who inside)」と同様、日英タイトルのセンスが光る作品。こういう言語感覚、とても詩的で素敵。
こちらもメイントリックより、稲沢探偵の性別というサブトリックの方が衝撃的だった。すっかり引っかかって、誤読させられたわ。

5.「魔剣天翔 (Cockpit on Knife Edge)」
各務亜樹良という新しい魅力的な女性キャラが登場。こういう頭の回転の速い、自立した女性は好き。保呂草が一線を越えて立ち回るので、ハードボイルド風味が増しているんだけど、このまま保呂草はアウトローの世界に入っていってしまうのだろうか。


全体的に、トリックの質を比較すると、やっぱり「S&Mシリーズ」に劣るのかも…と感想を書いていて感じた。キャラクタと独特の文体が読ませるんだけど、ただ、大学生コンビ(小鳥遊と紫子)の軽口をたたくノリは品がなくてあまり好きじゃない…。

語り手の保呂草は裏のある人物なので、彼によって書かれた(という設定の)物語をどこまで信用していいのかわからなくなるけど、森博嗣がシリーズ全体で何を伝えんとしているのか、引き続き残りを読んでいく予定。
by chatelaine | 2014-08-29 23:10 |

◆◆管理人:yukiko ◆◆欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


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