ゲンロンカフェ『アートで社会って変えられる?(仮)』対談メモ

ゲンロンカフェの「アートで社会って変えられる?(仮)」という対談イベントに行ってきた。ゲンロンの東浩紀氏(以下あずまん)と、チームラボの猪子寿之氏の対談。
ゲンロンカフェでは毎晩のように魅力的な言論イベントを開催していて、ずっと興味がありつつもなかなか都合がつかなくて行けなかった場所。時間の自由がきいた学生時代だったら、きっと通い詰めていたんじゃないかと思う。

あずまんが冒頭から「アートで社会が変わるわけないですよ」とあっさり結論付けていて笑えたけど、猪子さんのキャラクターもあいまって、ゆるいようでいて、突如鋭い言葉が飛び出すという、とても不思議な3時間だった。
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冒頭は、猪子氏の活動の紹介からはじまり、村上隆の「スーパーフラット」の概念を引いて、チームラボの作品や目指す世界観と比較。
その中でのキーワードとしては、

・空間そのものがメディアになる時代
・主体と客体の切り替え(この話は抽象的でよく理解できず…)
・価値観を売ることができない日本人。テクノロジーだけでは社会は変えられないことをわかっていない。対して、iPhoneはアート。価値観を変えた。
・日本の民芸的価値やオタク的価値はapple的なものを嫌う

ここまで聞いて、猪子氏は天才すぎて、すべて自分の頭の中で組み立てられて完結している印象をもった。それゆえ、言語化して人に伝えるのが下手なんだけど、そこを要約し、抽象的な部分を腹落ちするように言い換える天才があずまん。さすが言論の巨人だと何度もため息をついた。
あまりの要約力に「要約は凶器」という猪子さんの名言も飛び出た。「言葉の力はすごい。自分にはできない」とも。


次に、アート界の構造について、あずまんが分類。
(1)集団からネットワークしてできあがるアート(誰でも作れる表現がズラッと並ぶ)・・・家入氏、宇野氏、堀氏
(2)本来ならばなかったもの(価値)を提示するアート・・・猪子氏

これを猪子流に定義しなおすと、
(1)「ローカル・ロークオリティ・コミュニティ」 
VS
(2)「グローバル・ハイクオリティ・ノーコミュニティ」
の構造ということらしい。SNSの力で、前者がこれからウエイトを占めていくだろうと示唆していた。

ここで、「グローバルに通用する」とはどういうイメージなのかを、あずまんが補足。
(1)ハイコンテクスト・・・言いたいことがなくても芸としてできる。プロセスを楽しむことはハイコンテクストに依存する。
(2)ユニバーサル・・・地球の裏側まで届く突破力がある

チームラボは後者を目指しており、その姿勢をあずまんも支持していると。
まあ、ハイクオリティでイノベーティブな作品を作り出している(と自負している)天才集団なのだから、凡人集団と違い、そこを目指すのは当然といえば当然だろうけど。
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話の中で一番興味深かったのが、子どもとアートの関係について。あずまんには娘さんがいるので、彼の子育て論は大いに注目している。

「このアートはコンテクストに依存するのか、しないのか。子どもで実証実験できるのが嬉しい。子どもにはメディアアートが向いている。絵画の歴史・コンテクストを知らなくても楽しめるのが現代美術。」
→この意見は、わたしも子育てする中で体感として得ている。子どもは、世界の名画といわれる類の美術品より、現代アートの方が食いつきが良い。たぶん、キリスト教の宗教画などは、宗教の文脈のわからない日本の子どもからは、もっとも遠いのではないだろうか。


最後に、デジタルメディアの分野について話が及んだ。

「子どもにとってはデジタルよりも物質というメディアが強い。デジタルが物質に取って代わることは可能か?例えばデジタル教科書の議論があるが、書き込む、折るなど物質とのインタラクションの記憶が歴史となり、重要になってくる。そこまでデジタルで再現できるのか?できないならデジタルは物質の劣化コピーである。」

という、あずまんのなかなか手厳しい意見に対し、

「確かに物質は感情を喚起する。そうでない部分でデジタルの力を追求したい。可能かどうか、挑戦したい。そこに興味がある」

という猪子さん。なんと凛々しいではありませんか…。


この後、延長戦で質疑応答があったのだけど、これは、という内容にならず、わたしの集中力も切れたのでダラダラと聞いておりました。
ただ、お酒を飲みつつ、こういうアカデミックな話が聞ける場は、とてもわたしにフィットする。いくつになっても知的好奇心は大事にしたいよね。
by chatelaine | 2014-07-24 23:25 | ART

欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko