『冬眠する熊に添い寝してごらん』レビュー

Bunkamura シアターコクーンで上演中の舞台『冬眠する熊に添い寝してごらん』を観に行ってきた。
古川日出男と蜷川幸雄のタッグ作で、タイトルもすごいけど、上演時間も3時間45分と長大。まあ、これも蜷川幸雄の叙事詩だと思えば何のその。
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人に歴史あり、とはよくいったものだが、本作の場合、家系に業(ごう)ありとでもいうべきか。犬をを媒介にして、100年前と現代を行き来する多層的なストーリーが展開される。

「熊との契約」は「奇妙な家訓」となり、
「日露戦争への機運」は「石油賛歌」に繋がって現代まで「エネルギーは欲望」し、
「回転寿司のベルトコンベア」は「時間の回転」を意味し、
「獣姦で生まれた娘」は「犬」という言葉にとらわれ、
「猟師として受け継がれる罪の意識」は「熊でないものを撃つ」ことに繋がる。
すべてのキーワードに多重な意味があり、100年前と現代を行き交う。

劇中、「100年の想像力を持たない人間は、20年として生きられない」という、解釈にとまどう決めゼリフがあったけど、あれは観客に対して、想像することを諦めるな、というメッセージなのかなとわたしは捉えた。


さすがにびっくりした演出は、これがまた本作では何箇所もあるのだけど、まずは着ぐるみの犬と熊が登場すること。犬も熊もキーとなる役柄とはいえ、四足歩行で、よくまああんなに犬っぽい動きができるなあと。
次は、客席をまたぐ回転寿司の巨大セット。ここまで客席を巻き込んだセットははじめてかも。かなりの喧騒で、アドリブの多そうなシーンだった。
それから、鈴木杏と井上芳雄のベッドシーン。これは色気ありました。オペラグラスで見ていると、なんだか覗き見している気分になって、こっちが照れたわ。


主演のひとり、KAT-TUNの上田くんは、蜷川演劇によくある、苦悶する役どころ。前半は兄とたわむれる無邪気さを、後半は身をよじり狂気に打ちひしがれる絶望を、別人のように演じていた。ただ、意図してなのか、表層的でわかりやすい苦悩だったよね。わたしはもっと屈折した感じが好きなので、あまり萌えなかったけれど、ファンの方にはたまらんのだろうな…。

あと、ヒロインの鈴木杏がとてもよかった。舞台で観るのが久しぶりだったぶん、思い出の中の少女から、女性に変貌していたというか。表情も秀逸で、舞台映えする女優さんだと再認識。
詩的なセリフを文節で区切る発声、独特な容貌と思い込みの強さと色気、なにより「犬」に取り付かれた空気が出ていた。


古川日出男の原作を読んでいないので、すべてが繋がったわけではないし、あのシーンの意味は?と思う部分もあるけれど、とにかくこの作品では、自分の100年の想像力を信じて、導かれるままに遠くまで身をゆだねるのが良いかと思った。
by chatelaine | 2014-01-30 23:42 | STAGE

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