『TIME/タイム』レビュー/見事なる時間格差社会

グアム行きの飛行機の中で、たびたび息子に邪魔されながらも、映画『TIME/タイム』を観た。細切れで観るには惜しい、目新しいシチュエーションの作品だった。

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人類は平等に25歳で成長がとまり、その後は、各自1年間の持ち時間が寿命となる世界。時間が通貨となっており、家賃も食品も時間で売買されるという設定。
例えば、1ヶ月分の家賃は、1ヶ月分の寿命で払う、といったシステムだ。

富める者は100年でも100万年でも時間を保持しており、見た目は25歳のままで、ほとんど不老不死。一方で、貧しいものは明日を生きる時間すらなく、持ち時間が無くなればそれはすなわち死を意味する。生きるためには他人の時間を盗む輩まで出てくる。

と、序盤は、このユニークな世界観だけでぐいぐい引き込まれるのだが、残念なことに、中盤以降はやや中だるみ状態。よく練られた設定なので、もっとオチの付けようがあったと思うのだけれど・・・。

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主人公・ウィルは、スラム街で母のレイチェルと生活し、日銭(時間)を稼いでいる。暮らしは困窮しており、二人とも、日々の持ち時間(寿命)は24時間を切っているような生活だ。

ある夜、レイチェルはウィルとの待ち合わせ場所までバスで移動を試みるも、バスの料金は「2時間分」と、急に値上がりしていた。彼女の持ち時間はそれに満たないため、バスには乗れないが、しかし待ち合わせ場所まで歩くと2時間はかかる。これはつまり時間切れ、彼女の死を意味するのである。

絶望するレイチェルに、バスの運転手は哀れみながら言う。「では走れ」と。
このレイチェルが走るシーンの鳥肌感ったらないが、正直、全体を通して、このシーンがクライマックスだったような気もする。

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ウィルは母親の死を目の前にし、このいびつな時間格差社会構造をぶちこわそうとする。
こんな社会システムを作った巨悪が存在するのか?と思いきや、そうではなく、システム内で時間を為替のように操作している富裕層への逆襲、といったところだろうか。
それも、大富豪の娘・シルビアとの逃避行や恋愛譚が入り混じり、なんだか通俗的な恋愛アクションになってしまったのは残念だった。

時間を奪うタイムギャングという生業があったり、タイムキーパーという時間監視局員が出てきたり、スラム街と富裕地区を隔てるタイムゾーンという料金所があったり。
本当によくできた設定なのに、そこで展開されるストーリーがやや陳腐で、通俗的だったことは、残念でならない。もうひとひねり、ほしかったな。
by chatelaine | 2012-02-10 23:19 | CINEMA

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