『八月の鯨』レビュー/品格とは

先日の『ラヴェンダーの咲く庭で』に関連して、『八月の鯨』という映画を観ました。共通点は、老いた姉妹の物語だということと、海に面した田舎(島?)という舞台設定、そして夏の陽光。異なるのは、本作には若い男が登場しないところ。

『ラヴェンダーの咲く庭で』では、海岸に流れつく若者が登場しなければ、話が始まらないのですが、本作では老姉妹と近隣の人間模様で映画が構成されています。なにかもが、ゆっくりと。

なにしろ主演の二人が、当時90歳のリリアン・ギッシュと79歳のベティ・デイヴィスなのだからすごい(二人の若いころの写真を見ると、壮絶なほど美人)。しかも監督も66歳だったとか。一言でいえば、鯨を青春の象徴とした、老人による人生賛歌の映画です。

しかし二人は老女というか、老嬢と言った方がしっくりくるほどでした。ゲストが来るときのもてなし方、身だしなみの気の配り方、亡き夫との記念日を祝う日のお洒落、素朴に見せているけれど実は手の込んだ調度品(安易なCGとはワケが違う)…老いを美しく見せようとしているわけではないけれど、すべてに品格が漂っているのを感じました。

途中、私はどうにも実家の祖母を思い出してしまい、じんわり涙が出てしまって。昔は一緒に走り回って遊んでくれたのに、最近では歩くのもやっとのおばあちゃん。帰省のたびに、身体がひとまわり小さくなっていて…。

そんな祖母もまた、何か慶事があるときにはいつも、普段の倍の長さで三面鏡の前に腰掛けて、きれいにお洒落をしていたのを覚えています。意地の悪い人なら、自己満足と言い切るでしょう。しかし、これこそが老いてなお残る、品格ではないでしょうか。


なんせ本作は、起伏に富んだストーリーではないし、テンポも老人の足並みのようにスローなんですけど、青春を懐古し、今を生きるのに心豊かになれる作品でした。おばあちゃんになってから、再び観てみたい映画です。きっと、感じ方が今とまったく違ってくるんだろうなぁ。


【以下、くすっと笑えたセリフ集】

姉妹
「あれは確か戦争の時よ」
「どの戦争?」
「この前の戦争よ。ドイツとの」

…長生きしてますねぇ。


妹と老紳士
「人生が長すぎると思わない?寿命以上に生きていて」
「そうは思わないよ。死ぬまでが寿命だ」

…この老いた男女の会話って、妙に風雅。


妹と友人
「あなたに面倒をかけたくないわ」
「人生の半分は面倒ごと。あとの半分はそれをどう片付けるか」

…そ、そうなの??
by chatelaine | 2005-06-21 23:40 | シネマ

◆◆管理人:yukiko ◆◆欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


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