『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』レビュー

満を持して、ショーン・ペンの『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』を鑑賞。平日お昼のテアトル・タイムズスクエアは、たいていガラガラなので、ひとりじめできる空間が多くて好きです。案の定、今日もガラガラ。(大丈夫?)


これはショーン・ペンが出ずっぱりの映画なので、いきおい私の感想も褒めっぱなしになるでしょう(笑)。とにかく彼は、孤独な役がうますぎます。

彼の出演作は、『ミスティック・リバー』からこっち、『21g』『ザ・インタープリター』、さらに私の好きな『デッドマン・ウォーキング』もそうですが、社会派ドラマが多いですよね。重くて、暗くて、ときには救いがなくて、本を一冊読むのと同じくらい考えさせられるテーマ。今回の映画も、やっぱり心の準備が要るテーマです。

そして、これらの作品すべてで、彼はそれぞれちがった「孤独」を演じています。その孤独の中で、例えばシスターであったり臓器提供者の家族であったり、なんらかの理解者を見つけるのですが、本作では理解者にあたる人物は最後まで登場しませんでした。究極にひとりぼっち。

主人公サムは、自分の信念を貫こうとすればするほど、妻・子供・兄・友に見限られていき、仕事もうまくいかない。そして、どんどん増す孤独感、寂しさから取る行動が、さらにサムを悪い方向へと導いてしまう…このあたりの、徐々に世の中の制度への不満が蓄積していく心理描写が、とても緻密でした。
いらだつサムの目が、ジーッとテレビのニクソン大統領をとらえ、徐々に狂気に至る様子とか。


あ、でも本作は、具体的な暗殺の経緯というよりも、暗殺という考えに行き着くまでの、サムの心理描写のお話なので、暗殺実行シーンも時間としては一瞬です。ニクソン側の描写は一切ないので、「暗殺者vsシークレット・サービス」という図式は見れません(←上映後、係員にいちゃもんつけてるオジサンがいたのよね/笑)


【以下ネタバレ】





眼に焼きついたシーンをいくつか。

もうね、観てられないんです。サムが妻にすげなく扱われるシーンは。電話に出てもらえなかったり、階段でずっと家族の帰りを待っていたり…。ショーン・ペンは傷ついた表情がこれまた上手いので、どうにも感情移入しちゃって、「もっと優しく接してあげてくださいっ!」と、妻役のナオミ・ワッツに言いたくなります(涙)


兄に絶縁を言い渡されるシーン。うつむいて、「ごめんね、ごめんね、許して」とでも言うような、どうしようもなく情けなげな、顔をクシャっとさせる表情。(実際には言ってません) 

これは、『I am Sam』のときの、悲しげな顔そっくりでした。繊細で純粋、という部分は、二人のサムに共通する部分だと思います。本作のサムに、もう少し割り切って生きる力があれば、いやそれ以前に支えてくれる人がいれば…と思うのは私の勝手な想像ですけど。


あとは、なんといっても、ラストの返り血を浴びたサムの身体。そして死ぬ間際の笑み。壮絶!純粋すぎる精神は、それが世の中に認められないときには、ともすれば過激化のもととなる…?


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「サムは周りの同情を誘うような男ではない。決して良い男ではないんだ。でも僕は万人に好かれる男を演じる事に興味はない。俳優としてそういう役からはなるべく遠ざかろうとしている」
(ショーン・ペン『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』
                   公式HPインタビューより抜粋)

すてき!どんどんヒネた役を演ってください!もう、とことんついてくわ~!
by chatelaine | 2005-06-20 23:08 | シネマ

◆◆管理人:yukiko ◆◆欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


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