『ラヴェンダーの咲く庭で』レビュー

渋谷で『ラヴェンダーの咲く庭で』を観てきました。女性客がほとんどで、私が思うに、ダニエル・ブリュール目当て組と、ジュディ・デンチ&マギー・スミスに自己投影(年を取っても恋したい)組と、ピアノマン組に分かれているような気がしました。私は…やっぱりダニエル君かな?


分別のある歳(というか老女)になっても、その分別を忘れてしまうほどの恋が、やってくることがあるんですねぇ…。ジュディ・デンチの、家族の目を気にしながらなので抑えた演技だったけれど、恋で眼を輝かせる表情・不安と嫉妬で眼を曇らせる表情が、絶妙でした。

なので私は最初、遭難者アンドレアをかいがいしく介抱する老女アーシュラのしぐさを、かわいいなぁ、とほほえましく観ていたのです。が、若い女性画家の登場で、アーシュラは束縛へと向かってしまい、そこからは観ていてつらかったです。ああ、自分で自分の首を絞めている、と。

『ベニスに死す』でもそうですけど、老いらくの恋とは、相手の若さに惹かれながらも、自分の年齢を引け目に感じてしまう、葛藤の多い恋かと思います。

それが本作は、ユーモラスで、劇場で声を出して笑えるほどコミカルだったのは、英語とポーランド語の溝を埋める際に生じる滑稽さと、ちょっと不遜な家政婦の言動のおかげではないでしょうか?意外に笑えるところが多かったので、楽しかったです。


【以下ネタバレ】





老女アーシュラが「私が彼を見つけたのよ!」と叫ぶシーンは、青年アンドレアと同じ年代の私としては、かなり…苦しかったです。これはもう愛ゆえの執着で、事実だから反論はできないけれど、その分よけい重たく感じてしまって。その場に彼がいなかったのは救いでしたが、姉ジャネットもそりゃびっくりしますよ。

しかも、彼女は分別のある年齢だけに、すぐに我に返って自分の行き過ぎを認め、自己嫌悪。これがかえって痛々しいんです。いっそ少女のままずっと夢見ていられたら、どんなにいいか。そう考えるとこの映画、けっこう残酷かも? 

でも、姉妹はアンドレアに出会えて、いろんなことを差っ引いても、幸せだったんですよね。ロンドンに去ったと知ったときの泣き崩れたアーシュラは、少女のようで。いなくなった彼のベッドに膝を抱えて横たわる姿といったらもう…(涙)

ラスト、アンドレアが演奏し、アーシュラが過去を回想するシーンは、ヴァイオリンの調べもあいまって、とてもキラキラしたものでした。海辺の貝殻、膝に乗せた頭、仕立てたスーツ、切った一房の髪…すべてがアーシュラにとっては永遠の一瞬。まさに初恋だわぁ!
…うーん、ここの音楽、いいですねぇ。情感たっぷり。うっとり。

それから、もう一つの老いらくの恋。医師は女性画家に恋心を抱いてますが、そっけなくされて、家の外で出待ち(笑)。こっちの方が、アーシュラよりよっぽど過激ですよねぇ。


本作が、老姉妹が主演で、その日常を描く、という内容だと知ったとき、ピアノマンを思い出す以前に、『八月の鯨』という87年の映画を思い出しました。これは未見ですが、大好きな塩野七生がエッセイで取り上げていたので、いずれ観ようと思いつつ、延び延びになっていたものです。今週、またAVルームのお世話になるとしましょう。
by chatelaine | 2005-06-19 23:37 | CINEMA

◆◆管理人:yukiko ◆◆欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


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