オペラ『サロメ』レビュー

すごいものを観てしまいました。これこそ芸術とワイセツのはざまかと。

今日は、ポーランド国立歌劇場の引越し公演、オペラ『サロメ』を観にいきました。国内でオペラを観るのは初めて。舞台の端のほうが見づらい座席だったんですけど…ま、学生料金だったので、そんなもんでしょう。


で、いったい何がすごいかって、サロメ役のシルヴィ・ヴァレルの「サロメの舞」のシーン。ここは、オスカー・ワイルドの原作では、
「サロメ、七つのヴェイルの踊りを踊る」
と、一行で済まされていて、官能の極致と言われるこの踊りがどんな風なのか、どうにも楽しみにしていたのですが…

なんと、脱いだ。最後の舞で、脱いじゃったんです、シルヴィが。完全なトップレス!いや、私も眼を疑ったんですけど、遠目に観ても、肌色のぴったりしたタイツでごまかすとか、そんなヤワなもんじゃなく…。

はじめてみました、舞台でトップレスなんて。かなり衝撃です。先月観た『ナイン THE MUSICAL』も相当エロティックでしたけど、比較にならないですね。

さすが、初演当時は、官能的・背徳的・不道徳的すぎるという理由で、上演禁止になっただけの作品だけはあります。もちろん上演禁止は演出のせいだけではなく、原作の、そのあとに続くサロメの独白シーンのせいでもあるようですが。

踊りの褒美にヨハネの首を求めるサロメ。
「私にヨカナーンの首をくださいまし」

首になったヨハネに接吻し、恍惚状態のサロメのモノローグ。
「あゝ!お前はその口に口づけさせてくれなかつたね、ヨカナーン。さあ!今こそ、その口づけを。この歯で噛んでやる、熟れた木の実を噛むやうに。さうするとも、あたしはお前の口に口づけするよ、ヨカナーン。あたしはお前にさう言つたね?あたしはお前にさう言つた」

「あゝ!あんなにも恋ひこがれてゐたのに。今だつて恋ひこがれてゐる、ヨカナーン。恋してゐるのはお前だけ…あたしはお前の美しさを飲みほしたい。お前の体に飢ゑてゐる」

「あゝ!あたしはたうとうお前の口に口づけしたよ、ヨカナーン。お前の脣はにがい味がする。血の味なのかい、これは?…いゝえ、さうではなくて、たぶんそれは恋の味なのだよ。恋はにがい味がするとか…でもそれがどうしたのだい?あたしはたうとうお前の口に口づけしたよ、ヨカナーン、お前の口に口づけしたのだよ」
(ワイルド『サロメ』より抜粋)

これを、延々と、生首を抱きしめて語るのだから怖い。(この時点では、もう服は着てますけど)
そしてまた、サロメを照らす月光が、血の色に変わっていく演出もかなり怖い。まさにLunatic!

「不思議な月だな、今宵の月は。さうであらう、不思議な月ではないか?どう見ても、狂女だな、行くさきざき男を探し求めて歩く狂つた女のやうな。それも素肌のまゝ。一糸もまとうてはをらぬ。さきほどから雲が衣をかけようとしてゐるのだが、月はそれを避けてゐる」


リヒャルト・シュトラウスの音楽も、陰々滅々とした感じが良かったです。劇中は音楽がストップするシーンがなかったので、弾きっぱなしでオケの人は大変でしょうねぇ。

ただ、私は『サロメ』といえば、上記の文語体に慣れていたので、ドイツ語かつ現代語字幕にやや違和感を覚えてしまいましたが…まさか旧仮名遣いで字幕をやるわけにはいかないだろうけど。
あ、ちなみに上記の訳者は、福田恆在。この岩波版は、ビアズリーの挿絵も付いているので、より悪魔的です。

にしても、誰か日本人で、演劇として演出してくれないかな…そしたら絶対観にいくのになぁ。
by chatelaine | 2005-06-18 23:45 | 演劇

◆◆管理人:yukiko ◆◆欧州大好き、映画や舞台の偏向的レビューブログ。子連れになってリスタート。最近はもっぱら子連れ旅がメイン。


by yukiko